2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツ国家意識を背景とした国民祝典劇・記念碑の発展と衰退を探る
Project/Area Number |
20520273
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
鈴木 将史 Otaru University of Commerce, 言語センター, 教授 (20216443)
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Keywords | 祝典劇 / ゲーテ / シラー |
Research Abstract |
今年度の研究の目的は、「人文主義時代に誕生し、啓蒙主義時代に体裁を整えた祝典劇が、ゲーテ・シラーの宮廷国民祝典劇を経て近代国民祝典劇へと発展する経緯についての分析」であった。この目的に従い、今年度はドイツ宮廷祝典劇および国民祝典劇の系譜におけるゲーテ・シラーの祝典劇を分析・考察した。 国民祝典劇の先駆といえるクライストの『ヘルマンの戦い』と相前後して、ゲーテは祝典劇『パレオフロンとネオテルペ』(1800)を執筆している。シラーも1804年に祝典劇『芸術への敬意』を発表しているが、両作品共、宮廷の祝祭を契機に執筆依頼された典型的な宮廷祝典劇である。そのためこの両作品はゲーテ・シラーの作品群にあってさしたる注目を受けないまま現在に至っている,しかし今回の研究で『パレオフロンとネオテルペ』がゲーテにとり「古き良き時代」と結びついた特別な作品であること、また『芸術への敬意』はシラーの戯曲中最後の作品であり、同時にドイツ宮廷祝典劇の掉尾を飾る祝典劇であることが明らかとなった。引き続き、ゲーテは祝典劇『エピメニデスの目覚め』を1814年に発表するが、この作品は「エピメニデス=ドイツ国民」の目覚めを主題に取った作品であり、ナポレオン解放戦争勝利により高まったドイツ愛国精神を表現する純然たる国民祝典劇であり、この事実から明らかなように、まさにゲーテはドイツ文学において、宮廷祝典劇から国民祝典劇への過渡期に活躍し、両祝典劇を執筆した唯一人の作家であるということができよう。ゲーテ・シラーのドイツ文学における位置づけは、既に極めて多角的な立場から究明されているが、祝典劇の分野においても両者はそれぞれ特別な地位を占めていることが今回の研究で明らかになったのである。 また記念碑研究においても、ケルン大聖堂およびニーダーヴァルト記念碑についてその国民記念碑的側面を考察した。
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Research Products
(2 results)