2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツ国家意識を背景とした国民祝典劇・記念碑の発展と衰退を探る
Project/Area Number |
20520273
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
鈴木 将史 Otaru University of Commerce, 言語センター, 教授 (20216443)
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Keywords | 祝典劇 / ゲーテ / シラー / ライン川 / ハイゼ |
Research Abstract |
今年度の研究の目的は、「ゲーテ時代以降のドイツ祝典劇が、ロマン主義を経て本格的な国民祝典劇へと進化し繁栄を迎えるその経緯と実態の実証的分析」であった。この目的に従い、今年度はレヴェツォウ及びブレンターノの初期国民祝典劇、更にヴィルデンブルーフ、ハイゼ、ローデンベルクといった19世紀中盤から後半にかけての繁栄期の祝典劇を分析・考察した。 ゲーテの祝典劇「エピメニデスの目覚め」を直接範に取り、その続編を描いた作品がレヴェツォウの「エピメニデスの裁き」である。この作品はゲーテ作品を祝典劇的に更に先鋭化し、フランスに対する連合軍の勝利を高らかに謳いあげ、トリオンフィなど祝典効果の高い演出を施したことにより、ゲーテ以上に後の国民祝典劇的要素を先取りした劇となっている。そしてほぼ同時期に書かれたブレンターノの祝典劇「ライン川に、ライン川に!」は、国民祝典劇では以降重要な要素となるライン川を擬人化した点で、先進的な祝典劇となった。また、この作品のフィナーレに登場する「レンゼの玉座」横にゲルマニアが位置する構図は、劇以上に「ニーダーヴァルト記念碑」など記念碑に応用された「記念碑的構図」といえる。こうした勃興期を経て、ドイツ統一がなった1871年以降、いよいよ国民祝典劇は量産され、繁栄期を迎える。その中心的人物として礼賛される人物は、皇帝以外ではゲーテならぬシラーであり、ヴィルデンブルーフ「ヴァイマール賛歌」にその典型的な例が見られる。また、この時期から祝典劇で「平和」も礼賛されるようになるが、それはかつて30年戦争後の厭戦観の只中でリストが描いた「平和を願うドイツ」に見られるような戦争を忌避する意味合いではない。ハイゼやローデンベルクの国民祝典劇における平和とは、戦争での勝者に訪れる平和なのであり、勝利の輝かしい報酬として歓迎されるのである。敗者は舞台からただ去るのみであり、平和を称える仲間からは阻害されたままである。
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Research Products
(2 results)