2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代ドイツ国家意識を背景とした国民祝典劇・記念碑の発展と衰退を探る
Project/Area Number |
20520273
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
鈴木 将史 小樽商科大学, 言語センター, 教授 (20216443)
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Keywords | 祝典劇 / 記念碑 / ドイツ近代文学 / ドイツ愛国精神 / ライン川 |
Research Abstract |
本年度は、ドイツ帝国建国以降の世紀転換期ドイツ国民祝典劇の詳細な実態と、その精神性の特徴の究明に努めた。まず取り上げたのはフリードリヒ・ホーフマンの「三戦士」(1872)である。ドイツ統一を記念したこの祝典劇は、家族の会話により劇が進行するという、従来には見られなかった写実性・ベリズモ性が認められ、親子三代の戦士がそれぞれの戦いとドイツの状況をふりかえるという、作品に今までの祝典劇にはなかった歴史性が付与されている。これは祝典劇が社会的に認知され、一般劇に接近すると共に、建国なったドイツ帝国の正統性を強調する目的が新たに生じたためと考えられる。また、ホーフマンとほぼ同時期に、解放戦争で活躍した軍人達を顕彰した祝典劇も多数創作され、その代表作ともいえるマルティン・ベームの「セダン、或いは25年後」(1895)とフェリックス・ダーンの「モルトケ」(1890)を取り上げ、そこに現れた「聖戦」としての解放戦争像をより詳細に分析した。また、20世紀を迎え国民祝典劇も円熟期に入ると、機会的な劇かち壮大な歴史劇へと祝典劇も大型化・総合化していく。その典型的な例であるエーバーハルト・ケーニッヒの「シュタイン」に見られる総合的なドイツ精神礼賛の特徴を検証し、祝典劇分野における作品変遷を明確化した。この時期の祝典劇は「三戦士」同様、神聖ローマ帝国より続くドイツ帝国の正統性を前面に訴えた作品が多く、特にその典型として、同時期に活躍した女流作家ヨハンナ・バルツの「国母」ルイーゼを主人公とした一連の祝典劇を考察した。 記念碑研究も同時に進め、国民記念教会の典型例として「ケルン大聖堂」を考察した。ケルン大聖堂は工事再開を経て600年という気の遠くなるような工期の末に完成したが、「ラインの守り」という言葉に象徴されるドイツの国体意識の芽生えが大聖堂の完成に極めて重要な役割を果たしたことが判明した。この国体意識は、祝典劇とも共通する「ゲルマニア礼賛」という意識にも結びつき、そこに「ニーダーヴァルト記念碑」建設の原点も認められる。
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Research Products
(2 results)