2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520277
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川中子 義勝 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60145274)
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Keywords | 宗教 / 啓蒙 / 神義論 / 予型 / 形象 / トポス / 賛美歌 / ハーマン |
Research Abstract |
この年度は平成20年度の研究をひきつぎ、資料収集を重ねつつその分析を行った。 1.敬虔主義や覚醒運動など、近代各時代の人々が死生観や苦しみの理解を表明する際の比喩の伝統などを、文体の側面から見直したが、その際に、そうした伝統形成の背景を培ってきた宗教改革から19世紀に至る範囲の神学論争なども検討しつつ、神義論的問いの兆す場を跡づけた。ヨハン・フランク、ヨハン・ヘルマン、パウル・ゲルハルトなど30年戦争時代の詩人たちを中心とする賛美歌集に収められた苦難の受容を歌う詩篇を分析したが、なかでもがヨハン・レオンの「死」を中心に据えて検証し、「神義論」を思想や神学の独占概念から切り離し、文学共同体の修辞的伝統全体のなかに跡づける作業を行った。 2.この段階から、本研究の要となる「裏返された神義論」への転換を正面に据えて、跡づけていった。18世紀後半から19世紀全般におよぶ歴史発展への楽観論、ユートピア志向をレッシング、ヘルダー、ラーヴァターなどの思想家や、初期ロマン派の詩人たちにその先駆形態を見て、彼らの著作の個々の修辞、比喩形象を一旦解体し、目的論的再神話化としてのその言説の総体を価値づけていった。 3.文献を参照するための出張調査を今年度も行った。夏期休暇中にレーゲンスブルク大学の図書館、讃美歌学関係の資料の豊富な同大学の人文科学図書館において、その方面の資料収集にあたった。年度半ばにこれまでの到達点までを『神への問い』という書物にまとめたが(ベルンハルト・ガイェック教授との共著)、その成果をふまえた上で滞在時にガイェック教授と打合せを行い、研究のさらなる進展を目指した。
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Research Products
(4 results)