2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の技術革新と文化現象としての〈ブレヒト・チーム〉の関係
Project/Area Number |
20520279
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
中島 裕昭 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50217725)
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Keywords | ブレヒト / ドイツ演劇 / 技術革新およびメディア・テクノロジー / パフォーマンス研究 / 方法としての演技 |
Research Abstract |
平成22年度の本研究に関わる作業は、1)ブレヒトの教育劇と当時の技術革新との関係を明らかにすること、2)その成果としての教育劇の影響の程度とその内容を明らかにすること、3)研究全体をまとめるための補完的作業としてのドイツ訪問、4)メディア環境と演劇の関係について「演ずる」ということをキー概念とした再検討であった。 1)と2)については、ブレヒトの教育劇について、当時の技術革新とくにラジオと音楽の理論との関係が深かったこと、むしろそれらの成果がブレヒトの教育劇実践に示唆を与えたことを明らかにすることができた。また、その結果産み出された教育劇という形式が、現実の社会の争点を明確にし問題を共有するための方法としては優れているものの、その解決方法の選択と実践という点においては現代社会が受け入れることのできない飛躍をはらんでいるのではないか、という問題を発見することができた。 3)については、21年度には実施することができなかったドイツ訪問により、現在、ブレヒトの演劇実践や理論がどのような形で継承されているかということを、実際の演劇を鑑賞するとともに、文献の補完的収集および実践者へのインタヴューなどによって、明らかにすることができた。 21年度までにパフォーマンスとメディアの関係を見直し、その成果は、時代考証学会報告書の論文などにむすびつけることができたが、全体として研究作業が遅れたために、本来21年度に実施すべき現地調査を、22年度に実施せざるをえず、結果として成果発表も、当初予定していた22年度中に実現することができなかったが、それらについては、23年度の早い段階で実現する予定である。しかし、その間に4)に関わって、新しいメディア環境のなかで自己を定立しなおす方法としての「演ずる」という概念の近代性を、スローターダイクなどの理論から獲得することができた。その成果は、近日、翻訳として公刊される。
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