2008 Fiscal Year Annual Research Report
1800年前後のドイツ文学における「感性的なもの」と言語をめぐる考察
Project/Area Number |
20520286
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
亀井 一 Osaka Kyoiku University, 教育学部, 准教授 (00242793)
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Keywords | ドイツ文学 / 美学 / 機知 / 文学論 / アラベスク / モリヌークス問題 / ジャン・パウル / 啓蒙主義 |
Research Abstract |
1ジャン・パウルのテクストにおいて、感覚できない世界がどのように言語化されているのかを研究した。18世紀ドイツでは、啓蒙主義を背景とする世俗化のプロセスのなかで、死後の世界をどのようにイメージするかが大きなトピックとなっていた。従来のジャン・パウル研究でも超越的な世界はテーマの一つとなっているが、ジャン・パウル自身がヤーコビ哲学を理論的な拠所としたことから、ドイツ観念論のコンテクストで取り上げられることが多かった。しかし、文学テクストを調査すると、ジャン・パウルが経験論的なモデルを形而上学的なイメージに転用しているばあいが少なくないことが判った。本年度は、特に、死の視覚イメージをめぐる考察を論文にまとめた。そこでは、レッシングによる死のアレゴリーの更新、モリヌークス問題、18世紀の眼科医療といった観点から、「見える/見えない」という二項対立が死後のイメージに関連付けられてゆく過程を明らかにした。 2同時代のアラベスク(あるいは、グロテスク)論と関連付けながら、ジャン・パウルの機知を考察した。アラベスクは、ジャン・パウルに対する同時代批評のなかでたびたび用いられたイメージであるばかりではなく、近代意識の象徴そのものだった。1800年前後のドイツにおいて、アラベスクは、古典主義的な規範から逸脱しているという点で批判される一方で、自律的な芸術のモデルとみなされるようになる。また、理性や合理性では捉えられない領域に隣接する幻想的な要素もさまざまな形で主題化されるようになった。文化ゼミナールにおける講演では、アラベスクを参照することによって、ジャン・パウルの大胆な比喩が、ことばの意味関連をことばそのものの反省へと転換する機能を担っていることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)