2009 Fiscal Year Annual Research Report
ロンサールの作品における典拠としてのローマ文学と注釈再考
Project/Area Number |
20520290
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
延味 能都 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (90203679)
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Keywords | バラ / ユリ / ロンサール / rose / lis / ronsard |
Research Abstract |
本年度は前年度に続き主にロンサールの作品に頻出するバラとユリの共出現の問題を研究し,一本の論文を執筆した。海外向けの発信を意識して論文はフランス語で執筆している。 ロンサールにおけるバラとユリの共出現は様々な形で現れており,その意味するところも多様である。前年度は「異教的儀式」,「祝福」,「喪」キーにして全作品から関連する記述を集め,ローマ古典作家との関係を中心に考察したが,本年度は多様な意味の中から,「平和」,「平穏」,「安全なる場所」,「春」中心にし,古典作家との関連やいわゆる「黄金の時代」との関連も踏まえて考察を行った。 バラとユリは,「花」一般を象徴する代表的な花としてまず最初に「春」の象徴である。しかしその「春」は季節としての春という把握しやすい具体的な意味から抽象的な意味までの広がりを含んでいる。このバラとユリによる象徴は,使用されると,ほぼ自動的に一連の連想を喚起する。まず始めに具体的な意味で季節を表す「春」が喚起され,それはたとえ暫定的なものではあるといえ,1546年のアルドルの和約によって漸く実現された「平和」へとつながって行く。そしてそれはさらに「黄金の時代」のステレオタイプな描写へと移行し,同時に,寒気や嵐,その他の危険によって脅かされることのない安全でこころ休まる場所をも象徴するようになってゆく。 この過程でローモニエ全集1巻に収録されている「フランスの讃歌」,第8巻収録の「哲学の讃歌」,9巻収録の「牧歌-サヴォワ公爵夫人マルグリット殿へ」,13巻収録の「スコットランド王妃への田園詩」などに出現するバラとユリについてこれまでの全集の注釈では触れられていなかった部分を補った。
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Research Products
(1 results)