2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520297
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
北見 諭 Kobe City University of Foreign Studies, 外国語学部, 准教授 (00298118)
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Keywords | 思想史 / 哲学 / ロシア / ロースキー / ベルクソン |
Research Abstract |
本研究は、ロシア思想による「生の哲学」(ニーチェ、ベルクソン、プラグマティズム)の受容の過程を検討するものである。20年度にはロースキーによるベルクソン受容を主要なテーマとして研究を行った。存在論に関わる問題についてはすでに研究済みであったので、20年度は認識論に関わる研究を行ない、その成果を論文にして雑誌『スラヴ研究』(北海道大学スラヴ研究センター)に投稿するとともに、3月に北海道大学で行われた「プラトンとロシア」研究会で口頭発表を行った。投稿した原稿は、査読の結果掲載可であったので、次号の『スラヴ研究』に掲載されるはずである。その論文で問題にしたのは、ロースキーのベルクソン受容に見られるある種の歪みであり、その歪みを徹底して検討することにより、ロースキーの哲学に潜む潜在的な志向を明らかにした。その志向とは、簡単に言えば、西欧哲学がカオスとしてイメージする物自体の世界を、秩序化されたコスミックな世界として描き出そうとする志向であるが、そうした志向は、ロースキーにのみ見られるものではなく、さまざまに形を変えて当時の「ルネッサンス」期のロシア思想家に共通して見られるものである。そのことについては、これまでの研究でも何度か指摘してきたが、今後の研究を重ねる中で、さらに別の思想家のケースでも同様の志向が見出されることを実証的に明らかにしていく予定である。 さらに、20年度には上記の研究と平行してロシア思想によるプラグマティズム受容の基礎的な情報の収集と整理を行った。これは、今年度以降に予定している、ベルジャーエフやエルンによるプラグマティズム受容に関わる研究のための予備作業である。さらに付け加えると、20年度には、夏にモスクワのロシア国立図書館に出張し、研究に必要な資料の収集を行った。
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