2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520297
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
北見 諭 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (00298118)
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Keywords | 思想史 / 哲学 / 言語哲学 / セルゲイ・ブルガーコフ / アンドレイ・ベールイ |
Research Abstract |
本研究はロシア思想による「生の哲学」(ニーチェ、ベルクソン、プラグマティズム)の受容の過程と、そこに見られる問題点を検討しようとするものである。22年度には、当初の計画では研究対象に含めていなかったが、本研究で取り上げる思想家たちと同時代に属し、問題を共有しているセルゲイ.ブルガーコフの言語哲学の検討を行った。その結果、ブルガーコフの言語哲学にも、本研究で取り上げる同時代の思想家たちと同じ問題が見られることが明らかになった。本研究で取り上げる思想家たちは、西欧の生の哲学が人間的な意識や理性に先立つ根源的な実在としての生を捉えようとするのを評価する一方で、生の哲学がその根源的な実在をカオスと見なしていることを批判し、生の哲学から離れるとともに、実在が超越的な秩序を持ったコスモスであると考えるような独自の哲学を構築するわけだが、ブルガーコフの言語哲学もやはり、人間的な意識や理性に先立つ根源的な実在を問題にし、そうした実在が固有の形式や秩序を有することを明らかにしようとする志向の中で、言語(ロゴス)を問題にしている。また、ついでに言えば、ブルガーコフの場合には、実在とその秩序が問題になるものの、他の思想家のように生の哲学がこの問題に関わって影響を与えていることはない。しかし、22年度の研究を通して、彼の場合には若い頃に信奉していたマルクス主義の経済的下部構造という考え方が、意識や理性(上部構造)に先立つ実在として捉えられ、他の思想家に対して生の哲学が持っていたのと同じような意味を持っているのではないかという予想を立てることができた。ただしこれについては研究成果として主張するにはさらに研究を重ねる必要がある。
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