2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520297
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
北見 諭 公立大学法人神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (00298118)
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Keywords | 思想史 / 哲学 / セルゲイ・ブルガーコフ / ベルジャーエフ |
Research Abstract |
本研究はロシア思想による「生の哲学」(ニーチェ、ベルクソン、プラグマティズム)の受容の過程と、そこに見られる問題点を検討しようとするものである。 昨年度の研究では、前年度からの継続として、セルゲイ・ブルガーコフの言語哲学の検討を行い、その成果として夏に論文を執筆した。そこで明らかにしたのは、ブルガーコフの言語哲学には言語とは直接関係のないカント批判のモチーフが頻出するが、その批判の内に、生の哲学の受容に関わったロシア思想に共通して見られるのと同じような志向が現れているということである。 ブルガーコフの場合、直接的に生の哲学の受容が問題になるわけではないので当初は本研究の対象から外していたが、ルネサンス期を代表する彼の思想の内にも他の思想家と同じ志向が見出せたことは、本研究にとってはきわめて意義のあることであった。また、今のところ手をつけてはいないが、経済的下部構造とイデオロギー的上部構造の関係に関わるブルガーコフのマルクス主義批判の内に、生とその形式の関係という生の哲学に連なる問題が現れているのではないかという見通しを立てることもできた。 また、夏に論文を仕上げた後は、最後の研究対象としてベルジャーエフの思想の検討を始めた。ベルジャーエフ研究については本年度も継続して行うので、その成果の詳細は次回の報告に譲ることにしたいが、ベルジャーエフはこれまで本研究で扱った三人の思想家を含め、多くの同時代の思想家に共通する特徴(それはまさに我々が明らかにしてきた特徴である)を批判し、それと対立するような思想を構築しているので、彼をこれまで取り上げてきた思想家と同列に置くのは困難であるように思えるのだが、ベルジャーエフの思想も根本的なところでは、やはり同時代の思想と同じ志向に促されているということを、昨年度の内にある程度までは突き止めることができた。その成果は本年度の研究を経たうえで公にする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたエルンの思想の検討は今回の計画から外すことにしたが、その代わり、エルンよりもはるかに重要度の高い思想家であるセルゲイ・ブルガーコフの言語哲学を本研究の対象に取り入れることができた。本年度の研究で、最後の研究対象であるベルジャーエフの思想の検討を終え、その成果を公にできれば、ほぼ当初の計画通りに研究を終えることができると言ってよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は本年度で最終年度を迎える。すでに昨年度の後半から最後の研究対象であるベルジャーエフの思想の検討に取り掛かっているが、今年度の前半ぐらいまでに現在進行しているベルジャーエフ研究を一通り終え、その後はその成果を論文にするための準備を進めていきたい。本研究の視角からベルジャーエフの思想を検討するには、従来のベルジャーエフ研究を踏まえつつ、それを越えていく必要もあるので、できれば、広い観点からのベルジャーエフ論を一本と、それをもとにしてベルジャーエフによるプラグマティズム受容を扱った論文を一本、合計二本の論文を書きたいと考えている。時間的に余裕がなければ、後者は来年度に執筆せざるをえないかもしれない。
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