Research Abstract |
本研究は,1960年代末から現在までの間にロシアでなされたスターリン時代を題材とする表象を分析し,その時代ごとの変化や諸傾向,影響関係を探るものである。この作業を通して,ソヴィエト文化と現代ロシア文化の継続性と差異を明らかにすることを目指している。 2009(平成21)年度は前年度の活動を継続し,ソルジェニーツィンを中心としたソ連後期の作家の創作についての分析,また最新の文学作品の分析を行なった。さらに北海道大学において研究会を開催し,若手研究者との情報交換をはかった。具体的な活動としては,以下を挙げることができる。(1)ロシア文学・文化に関する文献の収集と分析,(2)ソルジェニーツィンの著作に関する現地調査,(3)北海道大学における研究会の開催。 ソルジェニーツィンについては,『赤い車輪』連作におけるスターリン,およびレーニンの描写について検討をした。また,その一環としてチューリヒにおける現地調査を行った。最新の現代文学としては,2009年に発表された小説のうちから,オレグ・パヴロフ『心停止』,アレクサンドル・テレホフ『カーメンヌイ橋』,エレーナ・カチショノク『昔々,おじいさんとおばあさんが……』といったスターリン時代を射程に入れたものを分析した。これらの成果の一部は『図書新聞』(2009年12月26日)で報告した。 北海道大学における研究会(11月28日)では,大川良輔,佐藤仁美,前田しほ,宮風耕治による報告がなされた。それぞれの報告の対象はアニメ,亡命文学,歴史ルポルタージュ,歴史改変SFと異なるものではあったが,いずれもペレストロイカ期に焦点が当てられており,研究課題をめぐるペレストロイカ期の重要性が再確認された。
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