2011 Fiscal Year Annual Research Report
キケローにおけるテオリアとプラクシスのローマ的統合
Project/Area Number |
20520305
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
角田 幸彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, 客員研究員 (70142544)
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Keywords | 国家政治 / ローマ精神 / 社交的社会 / ギリシア哲学 / 社会的感性 / 言論共闘 / 手紙文 / ローマ哲学 |
Research Abstract |
キケロー(前106-43)は、ローマ哲学史上最大の哲学者である。と同時にギリシア哲学、ヘレニズム期の哲学諸学派の本格的研究とローマへの導入者としての業績は驚嘆すべき高さを示している。しかし彼はギリシア人の哲学的世界観を単に後生大事に敬仰してローマへ伝えようとしたのではなく、ローマ人の伝統、ローマ人の精神に接合し、融合して現実に力あるものに変様させたのである。ローマにはギリシアと違って政治的社会というものが大きく力強く活性化していった。ローマ人はギリシア人にはない鋭敏な社会的感性があった。政治は単に国家運営という狭い枠で繰り広げられるというよりも、社交的社会という大きな人間的交流の中で花開いていった。 キケローはローマ哲学の真の創設者であると目されるが、それは彼がローマ精神の具現者、ローマ人の特質の哲学的表現をなし得た人ということを意味する。キケローはローマ政治における最も力強い弁論家・言論政治家であった。彼の哲学作品は実に幅広く、国家、法律、弁論、自然考察、神論、歴史論、倫理に及ぶが、他に詩作も一流のものを残し得た。しかも議会演説では他の追随を寄せつけない哲学的高邁さと状況との闘争性を彼は常に打ち上げることができた。今日まで彼の政治論争の雄弁的力と説得的滋味を身につけた政治家はいないと言っても何ら言い過ぎではない。弁説の神業の達成者であるキケローはさらに手紙文のヨーロッパ文学史上第一位の名手でもあった。900通残っているキケローの手紙はイタリア・ルネサンス(14・15世紀)と近世フランス(17・18世紀)において、手紙文の絶対的な基準になった程である。 ローマの社交的社会の哲学的表現者キケローはローマ文化全体の総合的で深遠この上ない形成者であった。書くこと述べること、自己の教養的深化に向かうこと、国家政治で毅然と言論競闘に身を挺すること、テオリアとプラクシスの統合者キケローが重要なのである。
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Research Products
(1 results)