2009 Fiscal Year Annual Research Report
フランス近現代文学におけるネオ・ジャクソニスム的傾向の研究
Project/Area Number |
20520306
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
田母神 顯二郎 Meiji University, 文学部, 教授 (30318662)
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Keywords | 仏文学 / ジャクソニスム / 解離性障害 / 記憶 / アンリ・ミショー / ピエール・ジャネ / ボードレール / アンリ・ベルクソン |
Research Abstract |
本研究は「解離性障害」の先駆的研究者として知られるピエール・ジャネの理論を中心に、テオドュール・リボー、ジャネ、アンリ・エー及びジャン・ドレーと受け継がれるフランス精神医学のネオ・ジャクソニスム的発想に着目し、その重要性や様々な可能性をフランス近現代の文学テクストの分析および再解釈を通して明らかにしようとするものである。具体的な作業としては、1)心理学、精神病理学、精神医学関係の資料収集とその整理・分析、2)各作家のテクストのネオ・ジャクソニスム的観点からの分析、などの基礎作業を行った上で、その成果を著作や論文集の刊行などの形で発表することを目指している。平成21年度は、その最初の成果が得られた年で、平成21年11月15日と12月5日に連続シンポジウム「記憶と実存」を行ない、思想、文学、精神医学の他分野にまたがる研究者を集め、それぞれの立場から発表を行なってもらいつつ、ネオ・ジャクソニスムの可能性を論じあった。この結果、ボードレール、プルースト、ミショー、デュラスといった作家における記憶やオートマティスムの問題が、ネオ・ジャクソニスム的視点から深められ、彼らの共通性と特殊性が浮かび上がってきた。またそれだけでなく、メーヌ・ド・ビラン、ベルクソンそしてドゥルーズへと発展していく「差異と反復」についての思想の系譜が、ジャネの理論を介して、ネオ・ジャクソニスムの問題とも関係づけ得ることが分かった。なお、このシンポジウムをもとに中間報告論文集『記憶と実存~フランス近現代文学におけるネオ・ジャクソニスム的傾向』を平成22年3月に刊行した。
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