2009 Fiscal Year Annual Research Report
フランス近・現代文学における「危機の書簡」-政治的考察の場としての「作家の手紙」
Project/Area Number |
20520307
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
澤田 直之 Rikkyo University, 文学部, 教授 (90275660)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 憲興 立教大学, 文学部, 教授 (50318680)
桑瀬 章二郎 立教大学, 文学部, 准教授 (10340465)
|
Keywords | 書簡 / 政治 / ルソー / フローベール / サルトル |
Research Abstract |
本研究は、ルソー、フローベール、サルトルというフランス18、19、20世紀の最も重要な手紙の書き手であると同時に、最も注意深い「危機」の観察者でもあった3人の代表的作家の手紙に注目し、文学者の書簡をその政治性において捉えようとする試みである。二年目の本年は、昨年に続き研究代表者・分担者がそれぞれの担当の作家に関して、その膨大な書簡を丹念に読み込み、その中から、政治的な考察を拾い上げ、検討することを中心に作業を行った。 桑瀬はルソーの「危機」の時期の書簡(1762)を中心に分析し、論文とした発表した。またパリにおいて同様の主題を発展させた研究報告を行った。さらにルソーの「私的な」書簡を訳出、実存的「危機」と「読者公衆」(政治的概念としての)という観点から詳細な解題を加えた。同時代の最も重要な書簡対詳説『危険な関係』についてもルソーとの比較的観点から分析を加えた。 菅谷は、フローベールの書簡の中から、本年度は特に『ボヴァリー夫人』執筆前後の1850年代を中心に政治的な考察を作品美学との関連において読み解く作業を行った。その成果の一端は、大学の紀要にフランス語の論文で発表した。また、リヨン高等師範学校および立教大学(菅谷が主催)における国際学会における発表でも、本研究において得た知見を披瀝した。 澤田はサルトルの書簡集を対象とし、第二次世界大戦中の時期に関して『戦中日記』との内容を参照して、サルトルの政治及び歴史観が戦争によってどのように変化したのかを検討する作業を行った。その成果の一端は、ロンドン、パリ、東北大学、実存思想協会における発表および講演で披瀝した他、『自由への道』の翻訳・解説にも活用された。
|
Research Products
(26 results)