2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランス近・現代文学における「危機の書簡」-政治的考察の場としての「作家の手紙」
Project/Area Number |
20520307
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
澤田 直之 立教大学, 文学部, 教授 (90275660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 憲興 立教大学, 文学部, 教授 (50318680)
桑瀬 章二郎 立教大学, 文学部, 准教授 (10340465)
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Keywords | 書簡 / 政治 / ルソー / フローベール / サルトル |
Research Abstract |
本研究は、ルソー、フローベール、サルトルというフランス18、19、20世紀の最も重要な手紙の書き手であると同時に、最も注意深い「危機」の観察者でもあった3人の代表的作家の手紙に注目し、文学者の書簡をその政治性において捉える試みである。最終年の本年は、これまでの調査研究を踏まえて研究代表者・分担者がそれぞれの担当の作家に関して、その膨大な書簡の中から抽出した政治考察を分析する作業を行うとともに、総括の一斑として立教大学でフローベールを中心としたシンポジウムを開催した。 桑瀬はルソーの「危機」の書簡が、特に自伝的著作において作品化されるプロセスについて調査を行った。さらには、ルソー死後最初に刊行された「全集」においてどのようにルソーの書簡が位置付けられ、公表されたかについても調査した。その成果の一部は、特に日仏会館における研究報告に生かされた。 菅谷はこれまで行なってきたフローベールの書簡の分析をふまえて、第二帝政という一つの時代における政治と美学との関係を考察の対象とした。立教大学で行なわれたシンポジウムを主催、サルトルのフローベール批判についての発表をおこなった。また長年準備してきたフランス語の著書が出版された他、イタリアで出されたフローベール論集にも論文を執筆して本研究の成果の一端を披瀝した。 澤田はサルトルの書簡集を対象とし、第二次世界大戦中の時期に関して『戦中日記』との内容を参照して、サルトルの政治及び歴史観が戦争によってどのように変化したのかを、小説『自由への道』との関係で検討する作業を行った。その成果の一端は、立教大学、東京大学、パリ大学、高麗大學における発表および講演、『文学』誌上の論考などで披瀝した他、『自由への道』の翻訳・解説にも活用された。
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