2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520309
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
山田 登世子 Aichi Shukutoku University, 現代社会学部, 教授 (90100544)
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Keywords | 修道院 / 手仕事 / 少量生産 / 清貧 / 余暇 / エコロジー |
Research Abstract |
課題に掲げた研究題目について、日仏の「贅沢」研究にかんしては、その成果を250枚の論文にまとめ、岩波新書として出版した。予定より早く、かつそれなりに充実した研究として発表できたことは大きな成果であったと思う。 さらに、上記の研究をすすめるうち、ココ・シャネルの贅沢の原点が修道院であったことを認識し、「清貧」と「贅沢」の逆説的な関係に眼をひらかれたのも大きな収穫であった。このことに着眼して、日・仏にわたり、来年度の研究の一方向を定めたいと思う。ことに「清貧の思想」のいわば本家である日本文化研究に力をいれたいという方向がみえてきたことも成果であった。 また、シャネルの南仏の「別荘」の在り方も示唆に富むものであった。これと関連して、フランス・イタリアのフィールドワークで経験した修道院ホテルや南仏プロヴァンスの夏の家での経験も、人が土地を選んで-たとえば季節に応じて-「住み」わけるという贅沢に眼が開かれた。今後の研究課題にいかしたいと思う。 アメリカの贅沢研究にかんしては、リーマン・ショックに始まる世界不況の震源地としてますます贅沢研究の困難性を痛感し、この点では、研究課題を十全に果たし得なかったと思う。というより、申請前と世界情勢がちがいすぎて、課題を大きく変更せざるをえないと感じている。 そのうえで、今後いかなる方向性があるのかを模索したいと思うが、一つの可能性として、米国国内のフィールドワークというより、アメリカ発の贅沢スタイルの在り方として、いわゆる「ロハス」なエコ志向の文化や思想に焦点を絞ると、「住む」ことにまつわる贅沢-ある土地を選び、その自然の恵みを護りつつ、これを人の富として享受する行為-に日米の比較研究が可能ではないかと思う。 上記のごとく、残された課題も多いが、日仏の贅沢研究を一著にまとめたうえで、さらに今後の研究課題が見えてきたことじたい本年度の研究成果であったと考えている。
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