2008 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀日欧にみるベニョフスキー「世界周航」の衝撃
Project/Area Number |
20520314
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 研一 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 教授 (80170744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 緑 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (10219024)
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Keywords | ベニョフスキー / コッツェブー / 世界周航記 / 非ヨーロッパ / シベリア / カムチャッカ / マダガスカル / 文明批判 |
Research Abstract |
佐藤は、まずゲオルク・フォルスター著『世界周航記』(1777)を、ヘルダーの『人類歴史哲学考』(1784-91)や『人間性促進のための書簡』(1793-97)も参考にしながら、ブーガンヴィルやクックの啓蒙的航海記と比較検討した。それを通して、フォルスターが、ヘルダー同様、複数座標軸的視座に立って、歪曲された非ヨーロッパ像を論難し、ヨーロッパの独善的文明観を批判する姿勢を見定めた。ついで、これを踏まえて、オーストリア国立図書館に於いて、ベニョフスキー著『世界旅行記』のフォルメターによる独語版(1791)に描かれるシベリア・カムチャッカ像に分析を施した(2009年3月)。これを基礎にして、当旅行記が、はたしてどれだけ通俗的冒険談の枠組みを越え、フォルスターのヨーロッパ文明批判に通底するといえるのか、目下、考察を加えている。 藤田は、ベニョフスキーの『世界旅行記』のマダガスカル篇に着手する準備段階として、まず、17世紀から当旅行記の英訳版刊行(1789)までの英国内のマダガスカル関連文献を、英国図書館にて調査した。目下のところ、1640年に上梓されたマダガスカル島訪問記が、出版物としては嚆矢と思われる。マダガスカルは、新大陸やアジアへの航海の途次、水や食糧の補給のため寄港する位置にあることから、訪問記・旅行記などの実見録が残されている点が、北アフリカを除く他のアフリカ地域と異なる。つぎに、マダガスカルへの言及はないものの、アフリカとの関連や僻遠の地探訪の観点から、当代冒険記の代表格であるダニエル・デフォーのThe life and Strange Surprising Adventrues of Robinson Crusoe(1719)を取り上げ、考察を加えた。
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