2009 Fiscal Year Annual Research Report
少年少女向け名作と「教養」形成――児童文学における翻訳叢書が果たした役割
Project/Area Number |
20520317
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 宗子 Chiba University, 教育学部, 教授 (40154108)
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Keywords | 児童文学 / 教養形成 / 少年少女 / 翻訳 / 叢書 |
Research Abstract |
1 東京創元社「世界少年少女文学全集」と講談社「少年少女世界文学全集」に特に焦点をあて、収集書目や発信者側の意識を中心に分析した。「教養」言説についても関連書をもとに考察を深めた。 (1)創元社版、講談社版友に地域割りを主体の巻構成であり収録書目も比較的似通っており、先発の企画を後発の講談社が受け継いでいる。だが後者には、前者にない「読書指導」のページが付されている。この検討をした結果、学校における教師の「指導」が文学作品に付随していること、「特権的子ども読者の存在」が印象付けられること、「現前テクスト透過の作品把握」の可能性が大であることなどが抽出されてさた。 (2)「教養」をめぐる関連書からは、青年期の「教養」として「文学」はそこに含まれるもののその一部であることがより明確になった。これに対し、少年少女期の「教養」として念頭におかれるのは「文学」、そのなかでも「小説」類の比率が高い。 2 大阪国際児童文学館および国際子ども図書館、国立国会図書館で関係する資料の調査及び資料収集を行った。特に、大阪国際児童文学館は、現在地は2010年3月末で廃館となり移転が決定したため、1960年代の叢書について補足的に調査を行った。 3 2009年8月開催の国際児童文学学界フランクフルト大会、同年10月の日本児童文学学会第48回研究大会でそれぞれ研究発表を行った。また、同年11月の韓国比較文学会2009年度秋季全国大会におけるシンポジウム「東アジア文学と世界、世界文学と東アジア」に講師の一人として招待され、この観点からもよ記叢書類について検討しえた。地域割り叢書の発想と文学による教養形成は、海外の研究者の興味をひくテーマであることが明らかとなった。
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