2010 Fiscal Year Annual Research Report
少年少女向け名作と「教養」形成――児童文学における翻訳叢書が果たした役割
Project/Area Number |
20520317
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 宗子 千葉大学, 教育学部, 教授 (40154108)
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Keywords | 児童文学 / 教養形成 / 少年少女 / 翻訳 / 叢書 |
Research Abstract |
1.収集済みの資料について、東京創元社「世界少年少女文学全集」と講談社「少年少女世界文学全集」の、発信者側の意識を対照・交錯させた検討を行った。そこからは、少年少女読者に向けて直接に発信者がメッセージを届けるかたちを採り、文学を「教養」の柱に据えた前者から、読者を指導されるべき存在として捉え、文学をいわばその材料として考える後者との差異が明確になった。 2新たな資料調査・収集の対象として岩波書店発行の「岩波少年少女文学全集」と小学館発行の「少年少女世界の名作文学」以降の三種を選び、神奈川近代文学館や天阪府立中央図書館国際児童文学館などを中心に、資料調査・収集を行った。 (1)「岩波少年少女文学全集」については、先の二つの叢書に倣い、月報や周辺資料の調査・収集を中心にした。さらに、本文の版面の種類にも着目した。同叢書は、同版元の「岩波少年文庫」を母体とし先行二種の「地域割り」叢書と一定の関係を保ちつつ、書目選定に当たっては窮二次大戦後の原著が多く選ばれていること、日常的作品では戦中戦後をテーそとするものやソ連・中国の作品が眼を引くこと、ノンフィクションの占める割合が高く、中でも古代史関速や社会と関わる人物の伝記に重点が置かれていることなどに特色がある。 (2)小学館の三種の叢書類の検討は途中まで進んだ。そこで見る限り、途中から対象年齢が下がること、英語圏のよく知ちれた「名作」群の収録に収斂されていく様子が窺える。 3 2010年8月に国際比較文学会ソウル大会で、また11月に国内の日本児童文学学会研究大会で、高等発表を行った。また、3年間の成果をまとあた冊子を作成した。
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