2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520318
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 徳也 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (10213068)
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Keywords | 現代中国 / 審美主義 / 周作人 / 生活の芸術 / 日常生活の審美化 / 張競生 / デカダンス / 審美現代性 |
Research Abstract |
1、周作人の審美主義の解明 (1)周作人が1920年代半ばに「美的生活」を重要なテーマと考えていたこと、そして、それが「生活の芸術」の提唱(1923、4年)にもつながっていたことを解明した。またそれが、張競生の著述活動に刺激を受けていたことを確認した。 (2)周作人における「生活の芸術」が求める「美」とはつまり「自然」なのだが、その「芸術」と「美」と「自然」の間の複雑な論理関係を解明した。 (1)周作人における「生活の芸術」は超動物的な社会文化形式である。 (2)逃れられない人間の動物性とはつまり本能・死であって、彼の「生活の芸術」論は、飲食欲、性欲そして死(老)の三つのポイントをめぐって形成されていた。 (3)しかし人間にとっての求めるべき「自然」とは、動物性そのものではなく、動物性(肉体、本能)を犠牲にする必要のない円満な状態、社会関係を意味した。 2、その他の諸課題 (1)張競生の関連資料を整理分析、周作人と比較検討して以下のことを解明した。 両者とも「美」「芸術」「生活」「性」の重要性を主張したが、それらをめぐる社会道徳と科学に対する態度が大きく違った。周作人が慎重な中庸論者、張競生が大胆な「極端」論者で、周が尊重した科学的実証主義を張は批判した。 (2)現在の中国大陸における審美主義の動向を占う議論(「審美現代性」の議論、「日常生活の審美化」の議論)の問題点を整理分析し、以下のことを解明した。 「審美現代性」がテクニカルタームとして主題化されるのは1990年代後半以降で、そのころ、ハーバーマス「近代:未完のプロジェクト」、フーコー「啓蒙とは何か」が翻訳されている。背景として、90年代前半に論壇のテーマが「現代化」から「現代性」へ移行したことがある。このころから知識人の地位と啓蒙運動は、国家権力よりもむしろ市場経済によってより強力な挑戦を受けるようになった。
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Research Products
(2 results)