2010 Fiscal Year Annual Research Report
石刻復元資料による柳宗元を中心とした唐代文学の文理融合型研究
Project/Area Number |
20520328
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
戸崎 哲彦 島根大学, 法文学部, 教授 (40183876)
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Keywords | 柳宗元 / 石刻 / 毀鼻亭神 / 武岡銘 / 永州八記 / 文宣王廟 / 龍城石刻 / 朱袞 |
Research Abstract |
柳宗元詩文に関して宋代以後の歴史地理書・方志等に著録の石刻関係資料および永州・柳州等での現地調査によって次の知見を得た。1)名作「道州毀鼻亭神記」には異文があり、文中の年代・人物・事跡についても議論があるが、道州刺史は薛伯高、字は景晦、元和七年に着任。2)「武岡銘井序」は著名ではないが、柳の政治思想を示す代表品と評価すべきであり、両『唐史』を補正する史料性も高い。また銘中には侠句がある。3)名作「永州八記」は蜀の簡州での石本が伝わるが、それは南宋の刻であり、今日の諸集本では音辯本と最も緊密であって南宋蜀本である詁訓本・百家注本とはかなり相異しており、范氏刊本との関係が推測される。早期の佚本を伝えるものとして貴重である。4)柳州市に現存の元初(1289)重刻「柳州文宣王新修廟碑」は、集本と異同があるが、唐の原刻に拠ったものとしてこれに従うべきである。また、同時に刻された肖像は民間に伝来の絵画が元祐七年(1092)に摸写、政和三年(1113)に刻石された系統にあり、最古で唯一の石刻肖像として極めて貴重である。5)「龍城石刻」は早くから柳書であると伝承され今日まで議論が絶えないが、弘治年間以前の明代初期に、北宋に仮託された「龍城録」を利用して、偽造されたものである。明清の間に盛んに重刻され、航行等の安全を祈願する護符として広西から湖南・江南まで流布した。6)永州朝陽巖洞内に現存する柳詩「遊朝陽巖」石刻は真蹟ではなく、正徳十六年(1521)朱袞による書刻である。7)永州鈷〓潭に現存する詩刻は柳宗元の作ではなく、また清代の説にいう宋・〓恕、最新の説にいう明・曹来旬の作でもない。8)拓本「柳公権書『九疑山賦』」を柳宗元の作とする説が近年発表されたが、南宋末の黄表卿の作であり、したがって柳公権の書でもありえない。9)近年出土の柳宗元撰「獨孤申叔墓志」・「薛君妻崔氏墓志」は柳宗元の書でもある可能性が極めて高い。
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Research Products
(10 results)