2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本統治期台湾における「大衆文学」研究-探偵小説を中心に
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20520334
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
星名 宏修 University of the Ryukyus, 法文学部, 准教授 (00284943)
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Keywords | 台湾 / 大衆 / 読者 / 植民地近代 / 探偵 / ラジオ / 原住民 |
Research Abstract |
本研究は、台湾における大衆文学研究の成果を踏まえながら、植民地における日本語大衆文学-とりわけ探偵小説-の実相とその読者像を明らかにすることを目標としている。 3年間の研究にあたって、初年度の研究課題を以下のように設定していた。 (1)1930年代の台湾における「植民地近代性」の諸相を、「島都」台北の変容と同時に、「貧民」や「犯罪者」に関する言説を通して検討すること。 (2)「植民地近代性」論、「モダニズム論」の検討 上記の目標に沿って、本年度は1930年代から40年代にかけて、そもそも植民地台湾の「大衆」「大衆文学」「読者」とはどのような存在だったのか、ということを軸に研究を行った。 『越境するテクスト』に収録された論文「「読者大衆」とは誰のことか?」は、台湾や日本における先行研究を整理しながら上記の問題を論じたものである。 また、本年度は2本の学会発表を行った。 (1)「萬華と犯罪-林熊生「指紋」をめぐって」 日本内地で「大衆文学」として多くの読者を獲得した探偵小説は、植民地期台湾においては読者・作者が警察関係者に限定された特殊な文学ジャンルであった。だが大東亜戦争のさなかに発表された林熊生(金関丈夫)の「指紋」は、従来の台湾探偵小説にはない特徴をもっている。 本報告は、同時期の台湾「皇民文学」の主要なテーマであった「アイデンティティ」とは異なる形で「同一性」を扱った作品として「指紋」を論じた。 (2)ラジオと「蕃地」-中山侑のラジオドラマを読む 1930年代に台湾でも「普及」したラジオは「近代」を代表するメディアであり、「ラジオドラマ」という全く新しい文学ジャンルを生み出した。本報告は、中山侑のラジオドラマを題材として、そこで描かれた「蕃地」像を論じた。
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Research Products
(3 results)