2009 Fiscal Year Annual Research Report
18・19世紀の日中比較文学研究―頼氏・齋藤拙堂・眞龍院を中心に―
Project/Area Number |
20520337
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
直井 文子 Tokyo Seitoku University, 人文学部, 准教授 (30242340)
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Keywords | 比較文学 / 頼杏坪 / 日本漢文学 / 頼山陽 / 齋藤拙堂 / 頼春水 / 近世後期 / 眞龍院 |
Research Abstract |
本研究では18・19世紀の日本の漢詩文作家の内7名(頼氏5名、齋藤拙堂、眞龍院)の文学意識を探ることを目的とした。本年度はまず、前年度に研究した頼春水の弟である頼杏坪の作品の把握・読解に努めた。その結果、前年度に複写を入手した、広島市立中央図書館蔵の『與樂園叢書』に含まれる頼杏坪の作品は意外に少なく、むしろ故・頼惟勤氏旧蔵の『春草堂詩鈔』に杏坪の詩作品の大半が含まれており、それらと刊本『春草堂詩鈔』所載作品との関係や内容の検討をすべきであると判明した。そしてその考察結果を論文「頼杏坪の詩」として、「老」・「閑」に対する杏坪の意識をまとめた。 石川県金沢市立玉川図書館近世史料館には、眞龍院の江戸から初めて加賀へ旅した際の日記『越乃山ふみ』の写本が所蔵されている。原本の所在は未詳の為、現地へ赴き、この写本を調査し、複写を入手した。その結果、眞龍院の漢詩作品は、この旅日記に載っている5首のみと思われ、漢詩作者として評価するには、あまりにも作品数が少ないことが判明した。眞龍院の文学意識はほとんど和歌によって表されていると考えられるが、その漢詩の用語を検討することにより、どのように漢詩文を勉強し漢詩を創作したのかを探る余地はあると考えられ、引き続き検討中である。 三重県津市では近隣の大学・高校・図書館等の機関の教職員や大学院生などにより、「齋藤拙堂研究会」が継続的に開催されている。その例会に出席し、『拙堂文集』所載の漢文作品を読み、研究上の情報交換等を行った。齋藤拙堂の著作としては、これまでに公刊或いは紹介されているもの以外、新たな資料は発見されていないと言ってよい。そこで旧稿に新たに作者についての解説を付し、論文「齋藤拙堂の<狂>」を『鳳よ鳳よ-中国文学における<狂>』の中の1篇として収めた。 頼山陽についても作品中の<狂>字の用い方を分類して考察し、論文「頼山陽の<狂>」としてまとめ、『鳳よ鳳よ』に収めた。 最近は日本漢詩文に関しても、1字検索のできるDVDが次々に発売されている。それらを購入し、検索機能を駆使して、中国文学との関連性の考察を継続中である。
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Research Products
(3 results)