2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520341
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
松家 裕子 Otemon Gakuin University, 国際教養学部, 教授 (20215396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小南 一郎 龍谷大学, 文学部, 教授 (50027554)
磯部 祐子 富山大学, 人文学部, 教授 (00161696)
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Keywords | 中国文学 / 唱導文藝 / 江南 / 宝巻 / 宣巻 / 浙江 / 紹興 |
Research Abstract |
平成21年度も、近世以来の唱導文藝てある宝巻・宣巻を中心に研究進めた(テキストとしていうときは「宝巻」、じっさいに儀式や芸能として行われるときには「宣巻」という)。最終的にテキスト研究とフールドワークの結果を総合することを目標としながら、3人がそれぞれの立場で文献調査と実地調査を進めた。 文献研究では、松家が「『杏花宝巻』楽善堂版日本語訳(稿)」を発表した。これは『杏花宝巻』楽善堂版の日本語訳に、同書の書影と若干の訳注を付して、当科学研究費の報告書のひとつとして公開したものである。宝巻についてはこれまで全編を日本語に翻訳したものは公開されていない。研究をより深化させるためにも、翻訳は不可欠の作業であって、意義を有するものと考えている。宝巻の日本語訳および注釈の作業は今後も継続し、順次公表していく予定である。 小南は文献研究の成果として、「「白蛇伝」と宋代の杭州」を発表した。中国の民間で広く知られた白蛇伝の物語を、杭州で語られていた、杭州の町の(ための)物語として見ることによって、新しい解釈を生み出している。ここで提出された語りの場所から読み解く方法は、今後の宝巻研究に生かされるべきものである。小南はまた、この論文が掲載された『中国近世文藝論-農村祭祀から都市藝能へ』の編集にも、シンポジウムの段階から携わった。この書物は、中国民間の文芸にかかわる研究中において、今後大きな意味をもつことになるであろうと思われる。 一方、実地調査については、磯部が、2008年に当科学研究費を一部使用して浙江省平湖において行なった、浙江省平湖のうたいものの芸能「〓子書」の調査の報告を、口頭で行なうとともに、「平湖〓子書に見る中国民間芸能の今」の論文にまとめた。「〓子書」(テキストとしては宝巻とかわらない)とその歌い手について、これが演じられる宗教的儀式の場に臨み、また聴き取りを行なったこの報告は、テキストとその文芸が行われていた場のかかわりという、これまで絶対的に情報が不足してきたことがらについて知らせてくれ、本科研費研究ならではの貴重な報告となっている。
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Research Products
(9 results)