2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520345
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 義裕 北海道大学, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (40200761)
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Keywords | 心の理論 / 視点 |
Research Abstract |
平成22年度の本研究の具体的内容とその意義について、関連研究分野の発掘と複数の研究分野の有機的な再編による新たなパラダイムの構築の試みという理論研究の側面と、それに関係する視点現象の調査とその分析という経験的研究の側面と、の二つに分けて報告する。 視点に関する理論研究については、前年度の研究テーマの一つである、「超越的視点の失効がいかに現代のコミュニケーション様式に影響しているのか」という社会科学的問題を継続して研究し、この問題をより広い歴史的文脈に置くことで、原理的なレベルまで掘り下げて考察した。具体的には、歴史学者のJonathan Craryや思想家Ivan Illichの「観察者の系譜」や「視覚の体制」の変容の議論に基づき、近代の固定的/超越的視点の相対化が、近代からポストモダンにかけての観察の様式や視覚の体制に大きく影響していることを確認した。これがいかにコミュニケーション様式や視点表現の使用に影響を及ぼすかというのが,本課題の経験的研究の側面である。 この経験的研究の一部として、今年度は沖縄県那覇市における視点表現の使用についての実態調査を行った。この調査は、20歳前後の若者世代とその親世代の視点表現の使用を比較し、琉球(および九州の一部)方言に特有の他者視点取得め世代間変化を明らかするという意図で行ったものある。パイロット的調査のため、まだ確定的なことは言えないが、調査対象の方言に特有の視点表現は、その使用が減少傾向にあり、これは他者視点取得そのものの変容がその背景にある可能を示唆していると観測している。
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