2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520352
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
氏平 明 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 教授 (10334012)
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Keywords | 吃音症状 / 吃音の診断 / 言語構造 / Multilingual Aspects of Fluency Disorders / 語の繰り返し / 発話の方略 / 発話産出過程 / 知覚のモニター |
Research Abstract |
本科研の最終年度にあたるため、発話の非流暢性の背景に言語の個別性と普遍性探究に関して、つぎの二つに焦点をあてて研究を進めた。一つはUniversity College LondonのPeter Howell教授と協力して、日英語の吃音症状がその個別言語の構造の特性によって異なって現れ、それが吃音の診断に影響していることを日英語の非流暢性の実証的統計的研究を通して明らかにすることであった。そしてそれをHowell教授編集のMultilingual Aspects of Fluency DisordersのChapter Authorとして著作で表した。またHowell教授を日本に招き、静岡市、浜松市、大阪市、宗像市で講演会を開いた。これらの意義はこれまでの吃音研究の論争の一つになっていた語を繰り返す非流暢性が吃音症状なのかどうかという議論を、英語吃音の音声学的・言語学的側面と日本語吃音のそれらの側面の対照研究から、そして日英語の言語構造の比較から、吃音者には語の繰り返しが生じる蓋然性が低いことを明示した点にある。それは英語母語の吃音者は英語の言語構造から語の繰り返しを数多く産出するが、日本語母語の吃音者は、英語とは異なる言語構造なのでその頻度がはるかに少ないという事実に基づいている。 二つめは、これらの研究を通して、まず発話の方略、そして発話産出過程に現れる音韻論的な記述や理論、そして出力の詳細と、知覚によるモニターを、音声学的言語学的に総括してとらえないと発話の非流暢性の背景がつかめないことが明らかになった。また各過程における記述や表記が正確でないと症状を表せないことも明らかにした。そして言語障害の出力過程と対峙する言語聴覚士や公立学校の通級学級を担当するきこえとことばの教師に対する啓蒙と働きかけのための論文を認めるとともに、依頼された講演でその重要性と方法を語った。
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Research Products
(6 results)