2011 Fiscal Year Annual Research Report
世界知識と語彙意味:より豊かで体系的な語彙意味論の構築をめざして
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20520355
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
由本 陽子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (90183988)
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Keywords | 特質構造 / 語形成 / 複合語 / 派生語 / 語彙意味論 / 世界知識 |
Research Abstract |
本年度はまず、昨年度から引き続き「名詞+動詞」型と「名詞+形容詞」型の複合語について、複合語全体がモノ名詞になる場合と軽動詞やコピュラとの結合により述語として用いられる場合とがどのように区別されるのか、またそれぞれの意味がどのように導かれるのかについてさらに考察を深めた。それぞれの派生の条件と意味解釈のメカニズムについては、特質構造を用いた生成語彙論の枠組みを用いて、昨年度までに提案していた分析をさらに精緻化した。 つぎに、「動詞+動詞」型の複合動詞のうち、語彙部門で形成されると考えられているタイプについて、由本(2005)で捉えきれていなかった後項動詞が非常に生産性が高く、その本来の意味が薄まっているもの(接尾辞ともいわれる「込む」以外に「あがる」「いる」「出す」「つく」など)を再考した。語彙的複合動詞リスト(国立国語研究所提供)に挙がっているすべてのものについて、どのような動詞と結合しどのような意味を付加し、項構造や下位範疇化素性がどのように変更されているのかを精査した。それぞれの後項動詞において多様な意味合成が起こっていることが観察されるが、それらについては、特質構造を用いた生成語彙論の枠組みでの共合成や強制、タイプシフトのメカニズムによって説明することを提案した。また、生産性が高い後項動詞はほとんどが、方向性や位置変化の概念を語彙意味に包入している動詞であり、前項動詞においては随意項あるいは語用論的に含意されるにすぎない場所概念を新たに項として創出する効果をもたらすものであることを示し、日本語の語彙的複合動詞を動機付けているのがこの効果であるという仮説を提案した。その成果は国立国語研究所主催の国際シンポジウムや日本言語学会において発表した。 これ以外に様々な語形成がいかに話者の世界知識によって支配されているかについてわかりやすく解説した単著を開拓社から刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(11 results)