2008 Fiscal Year Annual Research Report
否定関連現象の形式意味論研究-時・量化・取り立てに焦点を当てて
Project/Area Number |
20520361
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
楠本 紀代美 Hirosaki Gakuin University, 文学部, 准教授 (50326641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
タンクレディ クリストファー 慶応義塾大学, 言語文化研究所, 准教授 (80251750)
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Keywords | 英語 / 否定 / 形式意味論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまであまり否定と関連づけられてこなかった現象に着目し、その意味解釈や相関関係を考察する事により、否定とその関連現象の双方の意味を明らかにすることである。取り扱う否定関連現象として、時に関する副詞表現や時の量化など時制・時の意味論に関する現象、個体量化表現や複数表現に関する現象、取り立てや尺度含意に関す現象などが挙げられる。本年度は研究計画の初年度であるため、否定は直接関連づけることはせず、個々の意味現象について新しい現象の発見や新しい方向性での理論化に取り組んだ。 楠本は、A secretary cried after each executive resignedなどの文に見られる、通常の量化子の作用域を超えているように思われる時の副詞句内の量化子の広域読みについて考察した。副詞節全体の移動を提案し、このことにより量化子の作用域の意味的な問題が説明されるだけでなく、時の副詞節とそれ以外の副詞節との対称性も説明できるとし、論文にまとめた。 タンクレディは、everyoneや日本語の「wh-も」表現など、量化子と複数表現の特徴を併せ持つ表現における累積読みについて、主語/目的語の対立がある事を発見した。この対立は通常の複数表現や標準的な量化子や数量表現では見られないものである。このことは量化子と複数表現といった対立を超えた意味のオントロジーの必要性を示唆するものであるが、Landmanの提唱する総計とグループの区別をすることとそれを構成性に基づき意味解釈するために必要な統語構造を想定することで説明できると考えている。
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