2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国語における補語構造の非対称性に関する歴史的研究
Project/Area Number |
20520370
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊原 大策 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (30184790)
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Keywords | 結果補語 / 可能補語 / 非対称性 |
Research Abstract |
中国語の補語構造にはいくつかの非対称性が存在し、そのうちの一つが可能補語構造と結果補語構造の対応関係における対称性の破れである。 本年は、そうした非対称性に関して、とりわけ「V得動/V不動」と「V得消/V不消」を中心にその成立過程を検討することで、その非対称性の由来を明らかにした。 先ず「V得動/V不動」について述べると、現代中国語では「拿得動/拿不動」が常用されるにもかかわらず、「拿動」は使われない。この点に可能補語構造と結果補語構造の対応関係における対称性の破れが認められるわけであるが、歴史的に観察すれば、「拿動」はかつて明代白話で使用されていたことが知られる。そこでその発生と現代漢語への継承過程を調査した結果、旧白話において動詞の単なる連用構造であったものが、しだいに補語構造へと内部構造に変化を起こしたためであることが知られた。 同様に「V得消/V不消」も現代漢語において常用されるにもかかわらず、「喫消」は使用されない。この点において可能補語構造と結果補語構造の対応関係における対称性の破れが認められるが、一部の特定地域の作品においては「喫消」と「V得消/V不消」が共に用いられ、対称性の破れは存在しない。ここには対称性に関して地域性の偏りが存在する事実が認められるため、その背景には方言との関係の存在を想定できる。つまり、「V得消/V不消」の場合、その非対称性が発生した背景には、現代漢語が成立する過程において、一部地域の方言の特殊な語法が標準的な文体に採用された結果であると推測できる。
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Research Products
(1 results)