2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520372
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 博志 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (10200734)
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Keywords | フランス語 / 代名動詞 / 受動的用法 / モダリティ / 二次叙述 / 再帰動詞 / 中間構文 / 中間態 |
Research Abstract |
代名動詞受動用法は「可能」を表すもの(以下,第1のタイプ)と「規範」を表すもの(以下,第2のタイプ)の2つのタイプに分けられることが多いが,もう1つ,同じ「規範」を表しながらも,第2のタイプとは性質の異なる第3のタイプがあることを前年度の研究で明らかにした.第2のタイプ(Le vin blanc se boit frais.)の「規範」が,話し手および聞き手が潜在的動作主と同一化することによって生じるのに対して,第3のタイプ(Cette voiture se gare ici dans ce coin.)は束縛的規範がより直接的に現れる一種の指示文・命令文であり,文の成立条件が状況に大きく依存する反面,構文的な制約はむしろ少ない.今年度は以上の内容をまとめ,論文として発表した.さらに,第3のタイプにみられる特徴を,共起する副詞的要素との関連で分析した.その結果,まだ十分な検証は出来ていないが,第2のタイプと第3のタイプの新たな違いが浮かび上がってきた.すなわち,第2のタイプは潜在的動作主が対象物をある状態におき,動詞の表す行為を行うという意味で二次叙述構文と考えられるのに対して,第3のタイプにはそのような特徴は見られない.この点においてはむしろ第1のタイプ(Cette voitre se gare facilement.)に近い.今後は更に多くの例文にあたってこれら3つのタイプの類似点と相違点を検討するとともに,各々のタイプの特徴を叙述の類型という観点から捉え直し,多様な意味を表すフランス語代名動詞受動用法を正しく類型論的に位置づけることが課題となる.
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