2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520376
|
Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
野地 美幸 Joetsu University of Education, 大学院・学校教育研究科, 講師 (40251863)
|
Keywords | 「だけ」を含む否定文 / 日本語児 / 解釈 / 統語的情報 / 真理値判断法 |
Research Abstract |
日本語は「pro肉だけを食べない」のように「だけ」が目的語に付いた場合(「肉だけではなく他のものも食べる」という)「ない」>「だけ」の読みが可能であるが、「和夫だけがpro食べない」のように「だけ」が主語に付いた場合には不可能となる。この違いは、否定辞が目的語はc統御するが主語はc統御しないことに因るもので、統語的制約が働いていると考えられている。子どもによる解釈もこの統語的制約に従ったものであれば、「ない」>「だけ」の読みを目的語+「だけ」の文で容認し、主語+「だけ」の文で却下するはずである。平成20年度はこの予測の検証を行った。19名(平均6才2ヶ月)の日本語児と20名の大人の日本語母語話者を対象に真理値判断法に基づく実験を試みた。分散分析の結果、「だけ」を含む否定文の解釈に際して子供も大人と同様統語的情報を用いていることが示唆された。 先行研究では数量詞と否定辞が含まれる文、あるいはonly/[だけ]が含まれる文、の解釈を巡って盛んに議論がなされてきたが、「だけ」と否定辞が含まれる文に関しては先行研究がなく今回の実験で初めて子どもがどのような解釈を与えるのかが明らかになったことになる。また、今回の実験のように英語ではなく日本語で調べることにも大変重要な意義がある。英語と異なり日本語は主語も目的語も動詞に先行し、英語で問題となる語順の影響というものを排除できるからである。より確かな結論を得るためには今後引き続き実証的研究を重ねる必要があるであろう。
|
Research Products
(1 results)