2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520376
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
野地 美幸 Joetsu University of Education, 大学院・学校教育研究科, 講師 (40251863)
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Keywords | 「だけ」を含む否定文 / 日本語児 / 解釈 / Question Answer Requirement(QAR)説 / 真理値判断法 |
Research Abstract |
「だけ」と否定辞が含まれる「和子だけにプリントを配っていない」のような二重目的語構文は曖昧であり、「和子だけではなく他の誰かにも配っている」という「だけ]の作用域が狭い読み(以下、狭い読み)と「配っていないのは和子だけ」という「だけ」の作用域が広い読み(以下、広い読み)の両方が可能である。平成21年度はこのような文に対して日本語児がどのような解釈を与えるのかを明らかにすることを目的とし、研究を行った。18名(平均5才4ヶ月)の日本語児と18名の大人の日本語母語話者を対象に真理値判断法に基づく実験を試みた。分散分析の結果、幼児の狭い読みと広い読みの平均容認度に有意差がなくどちらも容認していること、また幼児と大人との間にも有意差がないことが明らかになった。よって幼児は大人と同様に2通りの解釈が可能であることが示唆された。また狭い読みと広い読みそれぞれ偽となるような文脈で正しく排除できるのかという残りの問題についても調べた結果、どちらも容認度が低く、正しく排除していることが明らかになった。 作用域を取る(scopal)要素が現れている否定文の解釈に関しては、Musolino and Liz(2006)のIsomorphism by Default説(ID説)とHulsey et al.(2004)等のQuestion Answer Requirement説(QAR説)が提唱されているが、英語児を対象にしたものが多く、日本語児を対象とした研究はまだ少ない。また、「だけ」のような焦点接辞が目的語位置に含まれている否定文についてもあまり調べられていない。本研究の実験結果はID説ではなくQAR説を支持するものであったが、日本語児を対象に焦点接辞が含まれている否定文について調べている点でも意義があると言えよう。
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