2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520376
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
野地 美幸 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (40251863)
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Keywords | 「だけ」 / 否定文 / 言語獲得 / 幼児 / 問答要件 / 格標示 |
Research Abstract |
1.目的語位置に「だけ」を含む否定文は2通りの解釈(「だけ」の作用域が否定辞より広い読みと狭い読み)が可能であるが、幼児が大人と同様にどちらの解釈も与えることができるのかについて21年度に調べた研究について日本言語学会で発表を行った。実験の結果は大人と同様に幼児(18名、平均5歳3カ月)も上記の広い読みと狭い読みの両方を容認し(平均容認度はどちらも0.78)、Musohno and Lidz(2006)の同形読み初期値(Isomorphism by Default)説というよりはHulsey et al.(2004)等の問答要件(Question Answer Requirement)説に支持を与えるものであった。そもそも焦点助詞「だけ」が含まれる否定文について調べた研究はごく限られており、同じ幼「児が曖昧文の2つの解釈を同等に容認しているという報告もないことから、本研究により重要な知見が得られたことになる。 2.「だけ」を含む否定文の解釈がL2日本語の主格目的語構文でどうなるかを調べる前段階として、L2日本語学習者による多重主語構文と主格目的語構文について調査を行った。母語が英語・中国語・韓国語のL2日本語学習者の発話コーパスを入手し、分析を行った。(i)両構文が母語に存在する韓国語母語話者は(他の言語母語話者と比べて)初級の段階から特に主格目的語の使用が豊富である、(ii)(中級でいったん母語の影響は見えなくなるが)上級で再度韓国語母語話者の主格目的語の使用頻度が他の言語母語話者と比べて高くなる。ただし、(iii)主格が標示されるべき非主語に対しての誤った格標示はごく限られたものであることが明らかになった。よってPrevost and White(2000)の表層的屈折欠如仮説(Missing Surface Inflection Hypothesis)と合致する興味深い結果を得たことになる。
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Research Products
(2 results)