2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520392
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小方 伴子 Tokyo Metropolitan University, 人文科学研究科, 助教 (10347255)
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Keywords | 国語 / 版本 / 段玉裁 / 説文解字注 / 校本 / 校勘学 |
Research Abstract |
当該年度はおもに、段玉裁の『国語』校本とその臨本についての研究を行なった。段玉裁には『国語』の校本がある。真本の存否は不明だが、臨本が二種類現存している。中国国家図書館所蔵の版本No.7395と、台湾の故宮博物院図書文献館所蔵の顧千里校本である。 研究代表者はこの二種類の臨本、とくに先行研究の記述に矛盾のある版本No.7395の詳細を可能な限り明らかにし、段玉裁校本の代わりとして『説文解字注』をはじめとする段玉裁の著作研究に利用できる資料であるということを実証した。版本No.7395は、「乾隆五十八年(1793年)三月に蘇州近辺の校勘学者或いは蔵書家が、段玉裁校本から直接写し取ったものである」ということが、当時の様々な記述から推測される。さらに底本が段玉裁校本と同じ金李本であり、段玉裁の書き入れが、位置も含めて忠実に写し取られている可能性が高い。一方顧千里校本は、「乾隆五十八年(1793年)五月に顧千里が段玉裁に校本を借りて書き入れを写した」ということがの跋文より明らかであり、その素性は版本No.7395より確かである。しかしその底本は公序本の中でも特殊な構成をもつ張一鯤本系統の版本であり、段玉裁校本の底本である金李本とは文字の異同も少なくない。また顧千里の跋文によれば、校語を写し取るときにもとの配置に手が加えられている。版本No.7395と顧千里校本には、それぞれ異なる利点と難点とがある。臨本としての限界もある。しかしそれを踏まえた上で、両者の利点を活かし難点を補い合いながら用いるのであれば、真本の代わりとして充分に役立つものである。以上の詳細は、『人文学報』No.433に発表した。
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