2010 Fiscal Year Annual Research Report
西洋人編纂資料と日本刊行資料による粤語語法の通時的研究
Project/Area Number |
20520398
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Research Institution | Toho Gakuen University |
Principal Investigator |
竹越 美奈子 愛知東邦大学, 経営学部・地域ビジネス学科, 准教授 (50340401)
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Keywords | 粤語・広東語 / 文法変化 / 漢語方言文法 / 日本刊行粤語資料 / 早期粤語資料 / 類別詞・量詞 / 類推 / 再分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)資料の収集、整理と紹介(既存の目録を参考に、19世紀から20世紀に日本で刊行された粤語資料のうち、主に会話書を対象として、資料の収集・整理・国内外への紹介をする。)(2)資料に反映している粤語の研究(各資料が反映している当時の粤語を研究し、19世紀から20世紀にかけての通時的変化を明らかにする。)(3)通時的変化のメカニズムの解明(先行研究の成果をふまえ、日本刊行粤語資料、西洋人による早期粤語資料、現代粤語の三つを語料として用い、語法の通時的変化の過程や条件を調べ、変化の動機を解明する。)であった。本年度の主な研究成果は、それぞれについて以下の通りである。 (1) 資料の収集、整理と紹介 最終年度なので、これまでの研究の総括として、西洋人資料と日本刊行資料の所蔵図書館名と図書番号を記載した目録を作成し、「早期粤語文献目録(稿)」(『早期粤語研究1』5-50頁)として刊行した。(2) 資料に反映している粤語の研究 主に、類別詞の"ti"に関して、論文を発表し、国際学会で口頭発表をした。その結果、この類別詞が結構助詞に由来するものであり、変化の動機として再分析が考えられることがわかった。(3) 通時的変化のメカニズムの解明 上記(2)の変化の動機として、内部的には粤語に特有のあいまいな統語形式に加えて、類推、再分析など、言語に普遍的な現象が認められ、外部的には周辺言語との言語接触も考慮しなければならないことがわかった。 以上の研究成果は、国外はもとより国内でもあまり研究されていない日本資料を内外に紹介し、さらに本研究の総括ともいうべき、早期粤語資料の総合的な目録を刊行したという点で国際的に意義のあることだと考えられる。今後も目録のさらなる充実を目指して文献調査を進めて行きたい。
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