2010 Fiscal Year Annual Research Report
メディアと都市言語-16世紀ニュルンベルクのパンフレット・ビラに関する文体研究
Project/Area Number |
20520401
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
森澤 万里子 福岡大学, 人文学部, 教授 (70279248)
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Keywords | 独語 / 独語史 / 社会言語学 / パンフレット / ビラ / 文体論 / 関係詞 |
Research Abstract |
本研究の目的は,16世紀のニュルンベルクにおいてパンフレットやビラという形態で出版された様々な種類のテキストの文体を分析することにより,新メディアである活版印刷が当時のニュルンベルク市民の言語使用に影響を与えた可能性を探ることであり,具体的な解明点の一つとして掲げられているのが「特定の種類のテキストに典型的な文体はあるか」という点である。 平成21年度に研究代表者の森澤は,16世紀後半の時事報告(Neuigkeitsberichte)に見られる関係詞の分布が当時の威信言語である官庁語及び一般市民の言語のそれとは異なるとの調査結果をまとめた。具体的に言うならば,時事報告の特異性は,古高ドイツ語時代から使用されてきた,無標の関係詞derよりも,これとは異なる文体上の機能を持つso及びwelcherがともに数多く例証される点にある。ただし,両関係詞の使用頻度は初期新高ドイツ語時代に徐徐に増した点が先行研究において指摘されていることから,平成22年度には外国旅費によるドイツ出張で資料を補足し,このような特異性が16世紀前半の時事報告にも見られるかという点を調査した。 その結果,16世紀後半とは異なり,最も多く例証されたのはderであり,so及びwelcherの使用頻度はまださして高くなかったことが明らかになった。この分布は16世紀前半の官庁テキストに見られるそれと概ね同様の傾向を示すものである。この点に目を向けるならば,時事報告は16世紀の流れの中で,derとは異なる文体的特徴を持つ二つの関係詞を積極的に受容することにより,このテキストに典型的な文体をかなり急進的に形成したと言うことも可能であろう。 この他,都市の言語使用の変遷をより広い視野のもとで考察するため,芸術理論書等の実用散文も資料とし,そこに見られる関係詞の分布について分析を進めた。
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