2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本語の「とりたて」の範囲と成立条件に関する研究
Project/Area Number |
20520407
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
安部 朋世 千葉大学, 教育学部, 准教授 (00341967)
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Keywords | とりたて詞 / 副詞 / 「むしろ」 / 「どちらかといえば」 / 「かえって」 |
Research Abstract |
本年度は、「比較選択」のとりたて副詞及び「比較選択」のとりたて副詞に意味的に類似する表現形式について考察を行った。具体的には、ムシロとドチラカトイエバ、さらに、ムシロと類似する用法を有するとされる表現形式であるカエッテについて、それぞれの用法を比較・考察した結果、以下の点を明らかにした。 (1)ムシロとドチラカトイエバを比較し、ムシロは<前提集合>の要素が「前提を満たす要素として想定されやすいか否か」という価値判断を有する要素として設定されるのに対し、ドチラカトイエバは<前提集合>の要素がニュートラルな関係で提示されるものであること、また、先行研究において「述べられる行為や状態の実現についての蓋然性に関する判断を担う」とされる「絶対」等の副詞類と意味的に近い関係を有する点を指摘した。 (2)カエッテは「予想される結果-それとは逆の事態」という関連が読み取れる文脈が必要であることを確認した。これは、何らかの設定において想定され得る結果・結論のうち、「その設定から最も妥当なものとして導かれるか否か」という価値判断を含む<前提集合>であると記述できることから、カエッテがとりたて用法を有する、具体的には、何らかの設定において想定され得る結果,、結論のうち、「その設定から最も妥当なものとして導かれる結果・結論」と「その設定からは導かれないと考えられる結果・結論」から成る<前提集合>の中から、「その設定からは導かれないと考えられる結果・結論」を<当該要素>としてとりたてるものとする記述が可能であることを指摘した。 以上の考察により、「比較選択」のとりたて副詞の意味とそれらと意味的に類似する表現形式との関係について一定の研究成果が得られたと考えられる。
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