2010 Fiscal Year Annual Research Report
イエズス会辞書類データベースに基づく,対訳を経由する語彙画定過程の研究
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20520408
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
豊島 正之 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10180192)
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Keywords | 宣教に伴う言語学 / キリシタン語学 / 多言語辞書 / 辞書編纂 / 日本語活字 / 日本語組版 / 対訳 / キリシタン版 |
Research Abstract |
本研究は、16世紀末~17世紀初頭にイエズス会が作成した語彙集のうち、日本語とポルトガル語・ラテン語との対訳語彙・辞書を中心とする当時の多言語辞書に注目し、イエズス会が作成・印行した実際の日本語・ラテン語テキスト類との語彙の対比によって、語彙集・辞書として選抜された語彙が、どのように画定され、どのような体系的性格を持つかを把握しようとした。 この時代の多言語辞書は、未知の言語を自国語へと翻訳する効果だけではなく、「他言語との対訳に基づく自言語語彙の画定」の効果も持っている。本研究では、イエズス会が日本で作成したラテン・ポルトガル・日本語対訳辞書、日本語・ポルトガル語対訳辞書が、いずれも当時最大のポルトガル語語彙を擁するだけでなく、当時の辞書編纂と密接に関連する事を、それらの辞書の全文データベースの整備によって明らかにし、これに関しては、ポルトガルで開催された国際学会での招待発表でも指摘し、査読論文としても公表した処である。 又、日本イエズス会出版物(所謂「キリシタン版」)のうち、天正少年使節帰邦後一年で印刷を開始した「前期版キリシタン版」の日本語活字が、従来信じられてきたような日本製ではなく、少年使節がヨーロッパ滞在中に作成させた欧州製である事を初めて明らかにし、査読論文として公表し、又、印刷史に関する国際シンポジウムでの招待講演も行なった。 本研究の成果物の一つである(上記の)日本イエズス会版「ラボ日対訳辞書」と当時の他のラテン語・ポルトガル語辞書類の統合全文データベースは、研究期間中にデータベースサービスとして公開を開始し、海外からも多くのアクセスを得ている。
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