2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520414
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高山 倫明 Kyushu University, 人文科学研究院, 教授 (90179565)
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Keywords | 音声学 / 言語学 / 国語学 / 国文学 / アクセント / 字余り / プロソディ |
Research Abstract |
古代日本語はシラビーム言語であり、中世を境に中央語は音節構造の変化を起こしてモーラ言語に転換したという有力な説がある。現代方言の地理的分布や、古代和歌の字余りの様相がその主たる根拠になっており、また平行して和歌の唱詠法にも変化のあったことが複数の研究者によって主張されている。本研究は、モーラ言語への転換が中世に起こったということの論理的根拠を批判的に検証し、新たな通時的見通しを述べようとするものである。その際、プロソディを扱う言語学的な韻律論と日本語音韻史の成果、およびミーターを扱う文芸的な韻律研究の統合的研究から、新たな論理を構築しようと目論んでいる。 日本語のリズムは基本的に2音で1拍(1フット)を形成すること、また、和歌・俳句等の伝統的韻文形式における5音・7音の配置の根底には8拍分のリズムを3拍または1拍の休拍を残して埋める4拍子のリズムがあることが古くより指摘されている(所謂「2音1拍4拍子論」)。筆者はこの観点を日本語の音節構造の史の研究に組み入れ、古代和歌の字余りの様相は基本的に近代極初期まで継続すること、したがってもともと根拠の薄い和歌の唱詠法の変化を強いて求める必要のないことを実証している。 本年度は、資料の収集と整理ならびに諸情報のコンピュータ入力を継続して推進し、あわせて日本語プロソディに関する史的考察を行った。具体的には、中央語の濁音を特徴付ける有声性・阻害性の意味するところを掘り下げ、その歴史的背景を探った。また、日本語諸方言の各種音調を、語、音韻句、文の各レベルで分類整理し、アクセントの史的変化を新たな観点から捉え直す試みを行うとともに、その地理的分布から基層言語の名残ではないかともされる無アクセント方言につき、当該問題に対する「周辺分布の原則」適用の有効性を言語地理学的方法論の原点に立ち戻って再考察し、その史的位置づけを試みた。字余り現象についても、本年度は特に近代初期の短歌を中心に、唱詠から律読へという詩歌享受方法の変容と字余り分布の変化の関連を分析している。
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