2008 Fiscal Year Annual Research Report
宮城県登米市中田町方言のテンス・アスペクト・ムード体系
Project/Area Number |
20520415
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
佐藤 里美 University of the Ryukyus, 法文学部, 教授 (00274879)
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Keywords | 方言文法 / テンス / アスペクト / ムード / 述語構造 |
Research Abstract |
3回の実地調査により、地元在住の3名の方言話者の自然談話を高音質のデジタル音声資料として記録・保存することができた。この音声資料は文字データ化され、各種の検索・分析に供せられる状態にある。当該方言の資料としては、民話の録音資料や俚諺集がいくつかある程度で、自然談話の記録はほとんどなく、文法分析に堪えるものではなかった。今回のデジタル音声資料・文字資料は、この方言の文法研究のための一次資料として、貴重な価値をもつ。録音・文字化作業は、次年度以降も継続する予定である。 動詞のテンス・アスペクト調査票、形容詞・名詞述語調査票を用いて、研究代表者の内省と、地元方言話者の内省との照合作業を行った。その結果、これらの述語形式の意味・用法について従前の曖昧な点を明確にすることができた。この調査票に、当該方言ないしは東北方言に固有な文法現象の解明に必要な項目を加え、第二過去形の用法、並びに叙想法の意味・機能について分析・記述を進めているところである。調査に当たっては、2回の中田方言検討会の場で、工藤眞由美氏、八亀裕美氏より理論上の貴重な指導・助言を得ることができた。その成果の一部は、佐藤里美(2009)『名詞述語文のテンポラリティー』(むぎ書房)に論じた。 本研究の方法論上の基礎となった故奥田靖雄氏の文献及び蔵書の目録をデータベース化した。テンス・アスペクト・ムードの複雑な現象は、特に方言の場合、相互作用しあう文法的な意味の体系という観点なしにはとらえきれない。この観点を有する奥田の方法を、多くの研究者や学生が学べるようにする必要があるが、これはそのための基礎的な作業である。
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Research Products
(1 results)