2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520419
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
丹羽 哲也 Osaka City University, 大学院・文学研究科, 教授 (20228266)
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Keywords | 基準点 / タ / テイタ / 人称詞 / 連体修飾 |
Research Abstract |
本年度は、以下のような基準点に関わる3つの領域について、それぞれの基準点のありようを考察した。文法現象に関わる基準点・視点の概念の諸相を見渡してゆき、その相互関係を考察することが、本研究の目標であるが、以下は、それに向けての基礎をなすものである。 (1)アスペクト:アスペクト形式における基準点・視点の問題、具体的には、述語のタ形(例:本を読んだ)とテイタ形(例:本を読んでいた)の対立がどのようなものであるかということを考察した。タ形は基準時点における動きを表し、テイタ形は基準時点における状態を表すが、ある文脈である事柄を表すのに、タ形かテイタ形かどちらかしか用いられない場合と、両方とも用いられる場合がある。それは客観的な状況で自ずと決まる場合もあるが、多くは、話し手が動きに着目するか、状態に着目するかという、関心の置き方に左右される。これは「タとテイタ」という題目で研究発表を行った。この関心の置き方というものが視点論の中にどう組み込まれるかということが課題である。 (2)人称詞:近世語の浄瑠璃作品を資料として、一人称詞・二人称詞の使い分けの問題(敬語上の基準の取り方の問題)を考察した。武士階級か町人階級かなどという身分による使い分けがあるという大枠のなかで、登場人物の役割や感情の変化に伴って人称詞の使い方も変化する有り様を分析した。この研究をもとに、市民講座で、「浄瑠璃の言語-「義経千本桜」における自称詞と対称詞-」という題目の発表を行った。 (3)連体修飾:従来、連体修飾節の研究と連体助詞「の」の研究とが別々に行われているが、本研究では、両者の研究を統合することで、連体修飾の意味構造の理解が深まると考えている。その中で連体修飾構造における基準点とはどのようなものであるかという問題も考察することになる。この研究成果は平成21年度に発表する予定である。
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