2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520419
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
丹羽 哲也 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (20228266)
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Keywords | 文法 / 連体修飾 / 関係名詞 / 文体 |
Research Abstract |
(1)本年度は、名詞を基準とする構文、すなわち、連体修飾表現について、名詞の関係的意味との関わりを詳細に考察した。動詞の意味と構文の関係は研究の蓄積が豊富だが、名詞のその種の研究は著しく貧弱な状況にある。本研究は、例えば「いきさつ、意味、印象、確率、過去、悲しみ、記念、原因、工夫、構造、答え、習慣、準備、姿、罰、無理、命令、要点」等々の二百個ほどの関係名詞について、(ア)その意味的な分類を施し、かつ、(イ)内容補充節を取るか、相対補充節を取るか、あるいは、その両方を取る場合、両者が重なり合うような関係か、独立するような関係かといった観点からの分類を合わせ行った。これにより、意味的な観点と構文的な観点とによる立体的な分類が可能となった。それととともに、これによって、前年度以前に行った助詞「の」による連体修飾や、関係名詞が形成するその他の構文との比較を行い、同格関係や修飾関係における基準点の働きを考察していく基盤が整った。 (2)近世の浄瑠璃詞章の会話文において、人称詞や敬語の使い分け、口語的・俗語的表現と文語的・古語的表現との使い分けがどのような基準によるのかという問題について、武家と町人の身分関係、男女の差、語り物・演劇としての性格といった観点から、考察を継続した。浄瑠璃の詞章は、近世期の語法の変化を跡づける資料として用いられることが多いが、そのような当時の現実社会の言葉の反映として見るだけでなく、演劇的な必要性や効果によって言葉を選ぶという面もあり、文法の問題と文体の問題との相互関係をきめ細かく捉えるようにした。 なお、(1)(2)ともに23年度内では口頭発表のみにとどまっているが、まもなく論文の形にする予定である。
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