2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520420
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
米谷 隆史 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (60273554)
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Keywords | 節用集 / 古本節用集 / 色葉集 / 辞書史 / 方言 |
Research Abstract |
東京大学国語研究室・東京女子大学・慶應義塾大学・学習院女子大学・京都府立総合資料館等において文献調査を実施し、主に、近世中期までに書写・刊行された古辞書や節用集諸本の書誌・画像データの蓄積を図った。ただし、平成21・22年度に近世節用集の総目録を意図した業績が他の研究者より公表されたことから、当初申請時の目的の一つであった、具体的な語形や字形情報と連動した節用集目録のデータ作成は、当該先行業績による新規紹介諸本の情報を生かすため、さらなる継続調査が必要となった。 一方、本研究の2年目以降に新たに研究目的として意識することとなった、同時代辞書との対照から見た節用集の位置づけの変遷については、2つの点で進捗があった。第1は、元和6年写色葉集(イロハ分類のみの語彙集)が高千穂・延岡地域で書写伝来した辞書であること、及び、同書に音韻・語彙両面にわたる方言的特徴が存することを明らかにしたことである(口頭発表済)。前年度に新たに紹介した諌早文庫本節用集に見る方言語彙掲出の事例と併せ、同時期に九州で書写された色葉集と古本節用集とが方言の掲出において如何なる相違を見せるかを検討する為の好個の一対を見出したことになる。第2は、色葉集の一本といえる元禄6年刊寺子節用福寿海が、主に江戸初期刊行の両仮名雑字尽と元禄4年刊頭書大広益節用集の所収語を基にした編纂であることを明らかにしたことである。前者は文書書簡用語を多く収める辞書であることから、文書書簡用語を増補する節用集が多く刊行されるようになる元禄8年以前に、色葉集の側が既に類似の試みを行っていたことを実証する結果となった(平成23年6月論文刊行予定)。 また、近世節用集研究に重要な節用集で、公的機関での影印本や原本閲覧が困難であった元禄8年刊節用集・寛延元年刊蠡海節用集・宝暦10年刊増字百倍早引節用集の全画像をweb上に公開した。
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Research Products
(2 results)