2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520426
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
柳田 征司 財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (10036410)
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Keywords | 抄物(しょうもの) / 室町時代口語資料 / 中興禅林風月集抄 / 万安英種(ばんなんえいしゅ) |
Research Abstract |
古代日本語が近代日本語に転換する室町時代の口語研究資料の一つである抄物は、東国語資料を含み、伝存する量が厖大で、極めて価値が高い。それにもかかわらず、その発掘と整備とは遅れている。本研究は、筆者が45年余調査して来た抄物の調書を整理し、複写物によって資料性を解明して、目録の完成に努めたものである。本年度は、仏書と国書の抄物と、既に目録を完成・発表している漢籍の抄物目録の増補改訂とに努めた。 1、現地調査と複写物の作成 抄物と関連資料の現地調査を行い、必要な複写物を入手した。また新たに伝存を知った資料の調査を行った。関西の寺院、大学図書館等を中心に東北大学・内閣文庫などでの調査を行った。 2、資料の性格の解明 抄者や成立時期が明らかでない抄物について考察を進めた。このことに関して本年度の成果のうち特に顕著なもの一二を挙げれば、『中興禅林風月集抄』とその原典についての考察と、万安英種(1591~1654)の抄物群諸本の整理と言語資料としての性格の解明とがある。前者は、近年中国において関心が高まっているにもかかわらず、資料が日本にしか伝存しないため研究成果の提供が急がれていたものである。 3、目録作成 目録記述を簡略なものとすることにし、原則として書名・巻数・抄者(講者・聞書者)・書写(刊行)時期・冊数・所蔵者・図書番号と奥書・識語・刊記・特記事項に限った。それによって、仕事を従来より早く進めることができた。『人天眼目』『般若心経』など原典書名で約70種の仏書に対する抄物、『城西聯句』『禅儀外文集』など邦人詩文・聯句集約20種をはじめとする国書に対する抄物、特定の原典をもたない一種の抄物などの目録の作成を大幅に進めた。 4、目録の公表 成果の一部を「研究発表(昭和22年度の研究成果)」欄に記したように公表することができた。
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