2009 Fiscal Year Annual Research Report
日英語を中心とした情報構造上の概念についての多角的研究
Project/Area Number |
20520436
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
河村 道彦 Shizuoka University, 教育学部, 准教授 (00283325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 恵 静岡大学, 教育学部, 教授 (80185032)
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Keywords | 情報構造 / 形式語用論 / 認知語用論 |
Research Abstract |
本研究は、形式語用論と認知語用論という異なる角度から情報構造上の概念を洗い直し、日英語の言語事実を詳細に検討しながら、その理論的な意義を再構築しようとする試みである。昨年度に引き続き、河村は形式語用論の立場から情報構造上の概念と韻律や談話構造との関わりを、内田は認知語用論の立場から有標構文の機能分析に占める情報構造上の概念の位置づけを中心に研究を行った。 (1)河村は、形式語用論の立場から日本語の対照主題の意味論・語用論と韻律の関係を論じた。具体的には、対照主題を表す係助詞「は」を含む句が韻律的卓立をどこに置くかに応じて異なる解釈を持つことを指摘し、この「は」の解釈上の相違に対して、「は」のもつ語彙的な意味と談話解釈の一般原則との相互作用による説明を提案した。その結果、「対照主題」という概念が従来考えられていたような原始的なものでなく、既出性や韻律、修辞関係などの相互作用によって産み出される擬似的な現象である可能性が示唆された。22年度は、対象となるデータを拡張し、この仮説の整合性と通言語的な拡張可能性について検証を行う予定である。 (2)内田は、認知語用論的な立場からthere構文、have型構文、be型構文の3つの存在を表す構文を取り上げ、これらの構文の間の選択原理を情報構造との関連において考察した。その結果、情報構造的な要因のほかにbe動詞とhave動詞の間の機能的相違や動詞に内在する情報の提示性の差などの要因が関与していることが明らかになった。現在、これらの要因間の相互作用についての詳細の解明と、それが情報構造上の概念に与える理論的な意味合いについて研究を進めている。
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