2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520450
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
宗正 佳啓 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (10341463)
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Keywords | Helsinki Corpus / 古英語 / 中英語 / フルテキスト / wh移動 / 名詞句 |
Research Abstract |
本研究では、英語の通時的言語資料としてToronto Corpus of Old English, Helsinki Corpus of English Texts, OED (CD-ROM)等を使用するが、Helsinki Corpusは、8世紀から18世紀初頭までの多数のテキスト・タイプを集めたコーパスであり(総計数約160万語)、汎用コーパスを目的としているため、フルテキストとして収録されていないという問題点がある。特に古英語と中英語の語数が、他の時代区分の語数と比較すると少ない。これを補完するコーパスが無いわけではないが(Helsinki Corpus of Early English Correspondence等)、版権の問題で一部のみがサンプルとして公開されているだけである。この問題を解決するため、本研究では、中英語までのテキストを可能な限りフルテキスト化し、構文解析も可能にするためLexa等を使用して品詞のタグ付けも行った。こうした作業を行うことで、Helsinki Corpusが持つ問題が解決され、さらには英語の史的研究に貢献することができる。 また、本研究では平成20年度に行ったwh移動の研究の展開として、名詞句からのwh移動について検討した。Wh移動は、普遍文法の本質を追究する上でとりわけ重要な現象であり、従来様々な分析が提案されている。最近の極小性理論に基づく分析では、素性の一致関係が移動の演算上の動機付けになっており、解釈可能な素性と解釈不可能な素性、及び位相(phase)に指定されるEPP (Extended Projection Principle)素性を仮定することで、wh句の顕在的移動と非顕在的移動が統一的に扱うことが可能になっている。しかし、名詞句からのwh移動の可否に関しては様々な条件が課されるが、その条件に対しては統一的な説明が与えられていない。本研究では、名詞句の構造を洗い直し、名詞句に生起する演算子(operator)を仮定することで、名詞句からのwh移動の可否に対して直接的且つ統一的説明を与えた。
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