2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20520450
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
宗正 佳啓 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (10341463)
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Keywords | Helsinki Corpus / wh-agreement / ゼロthat / V2 / V-to-I移動 / 制約 / 通時的言語差異 / 言語獲得モデル |
Research Abstract |
本研究では、英語の通時的言語資料としてToronto Corpus of Old English,Helsinki Corpus of English Texts,OED(CD-ROM)等を使用したが、Helsinki Corpusは、8世紀から18世紀初頭までの多数のテキスト・タイプを集めたコーパスであり、汎用コーパスを目的としているため、プルテキストとして収録されていないという問題点がある。この問題を解決するため、本研究では前年度まで、中英語までのテキストを可能な限りフルテキスト化し、構文解析も可能にするためLexa等を使用して品詞のタグ付けも行った。こうした作業はHelsinki Conpusが持つ問題を解決するだけでなく、さらには英語の史的研究に貢献することができる。 今年度においては上記の言語資料を基に、wh-agreementに関わる言語事実や構文、補文標識のT-to-C移動、COMPとTPの主要部とのφ素性に関する一致、英語の歴史に於けるゼロthatの導入とV2現象の消失、及び動詞のv-to-1移動の消失、さらに他言語のV2現象の通時的変遷に関する制約を帰納的に導き出し、既存の制約との相互作用を確認し、通言語的な差異の可能性がどこに由来するのかを検討した。また、上記の文法現象に関するデータを子供の発話データ(CHILDES等)と突き合わせ、共通性や差異を比較・検討し、通言語的多様性を説明することのできる普遍文法と言語獲得モデルが満たすべき制約を追求した。言語習得段階の子供が作り出す疑問文には、大人の文法と異なる現象が観察されるが、こうした現象が古英語期でも観察される。こうした事実が英語の歴史に於いて通時的に観察されるかどうかを、出来上がったコーパスで調査、確認し導き出した制約の検証を行った。これらの一連の作業によって、これまでの研究成果の妥当性を検証するとともに、前3年の総合を行った。
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