Research Abstract |
今年度は,中級レベルの読解授業を,教室授業と遠隔授業という形態で行った。教室授業は,留学生向けの授業として実施し,遠隔授業は,タイ・タマサート大学教養学部日本語学科で希望者を募り,4名の学習者を対象に課外授業として実施した。 読解過程については,文字から単語,文,段,文章へと積み上げていくボトムアップ処理と,既有の知識を使って予測を行うトップダウン処理があり,双方があいまって文章理解が行われるとされている。本研究では,トップダウン処理の予測に関わるとされるスキーマのうち,形式スキーマの活性化を意図した読解授業を行い,遠隔授業による読解指導に必要な条件について検討した。 教室授業,遠隔授業とも講義者が話す内容はほぼ同じであるが,遠隔授業の場合には次の点に配慮した。・教室授業90分に対し,60分に短縮,・教材の文章は,辞書機能・音声がつき,インターネットに公開中のものとする,・教室授業では授業当日に配布したプリントを事前に送信する,・課題はインターネットを通じて提出する。 タイの学習者との通信手段には,3名はWeb会議システム,寮からアクセスする1名は3名とは別の日にskypeを用いた。Web会議システムでも資料の画面共有ができず,Skype利用者同様,一番の問題となったのが,教室授業で行っていた板書や読解文章への書き込みである。板書は,「チャット機能」がその代替機能を果たしたが,指示表現や接続表現の範囲,文章構造を記した書き込みについては,授業中は口頭での質問を繰り返すことで解消を図ったが,授業後に「書き込み」をPDFファイルで送信すれば,より内容の理解が深まったのではないかと考える。学習者の顔の表情が視認できる人数であれば,遠隔授業の方が顔を下に向けないため,学習者の理解度が把握しやすかった。 海外との遠隔授業というと,交流主体の授業になりがちであるが,「読解」でも行えることがわかった。
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