2010 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語習得に個人差につながる言語適性(記憶や音韻処理能力)に関する基礎研究
Project/Area Number |
20520478
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小柳 かおる 上智大学, 国際教養学部, 教授 (90306978)
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Keywords | 第二言語習得 / 言語適性 / 作動記憶 / 音韻処理能力 / 個人差 / 言語処理 |
Research Abstract |
第二言語としての日本語の言語運用能力と、学習者の大きな個人差要因の一つと考えられる言語適性との関係を調べるために、前年度に引き続きデータ収集を行った。蓄積したデータが初級と中級についてはそれぞれ35名以上集まり、統計分析にかけられる段階になってきたため、データ入力や分析作業に着手した。(英語母語話者を研究対象としていたところ、上級には該当者が少なく、予定の数を集められなかった。)言語適性を情報処理に関わる基本的な認知能力ととらえ、作動記憶の容量や音韻処理能力などを測定した。また、言語運用能力を情報処理の側面でとらえ、英語の研究によく用いられる先行研究の基準を基に検討し、多少の改訂を加えて日本語に適用して、20~30分のオラル・データを正確さ(誤用のない節の割合)、流暢さ(ポーズの長さ、非流暢さの特徴の数)、複雑さ(異なり語数、形態素の種類、従属度)の観点から分析する基準を設定した。それに基づき発話の書き起こしと言語運用の評価を進めている。 また、これまでの文献調査の結果を整理し、展望論文を執筆し投稿した。その中で、言語適性を突き詰めると、作動記憶の機能と密接に関わっており、作動記憶の容量のみならず、音韻処理能力も作動記憶の音韻的短期記憶と関わり、その他にも作動記憶の処理速度や、作動記憶の中でも情報処理の制御するとされる中央実行系と呼ばれる構成要素の注意制御なども新たな言語適性として検討する余地が残されていることが明らかになった。さらに、言語適性研究は未解明とされる第二言語習得のインプット処理のプロセスを明らかにするための理論的な貢献ができることが示唆された。
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