2011 Fiscal Year Annual Research Report
論文作成のための日本語の共起表現の抽出-日中対照コーパスの分析を中心に-
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20520479
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
三国 純子 文化学園大学, 服装学部, 教授 (00301705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 和子 明治大学, 国際日本学部, 講師 (60463890)
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Keywords | 漢語動詞 / 和語動詞 / 共起語 / 転移 / コーパス |
Research Abstract |
研究の目的 論文執筆に必要な日本語力の一つとして、語のコロケーションに関する知識が重要であることが先行研究で指摘されている。日本語と中国語の漢語動詞には同形同義語が多く存在するが、共起する語は必ずしも一致していない。そのため、これらの漢語は中国人日本語学習者の理解を促進する(正の転移)と同時に、文章作成過程においては不自然な共起語を用いた誤用(負の転移)を招く。中国人日本語学習者は、どの共起語が漢語、和語のいずれに対応しているかを習得しなければ、中国語の知識を正しく転用することはできない。本研究では漢語や、漢語と対応する和語を共起語も含めて、どの程度正しく習得しているかを調べ、中国人日本語学習者にとって習得が困難な点を明らかにすることを目的とする。 前年度までの研究概要 日中同形同義語の漢語動詞と、それに対応する和語動詞の共起語をコーパスから抽出し、使用頻度、語の難易度などを考慮しながら短文を作成した。中国語を母語とする日本語学習者に、日本語習熟度テスト及び、作成した短文の正誤判断調査を実施し、調査の量的データを統計手法により分析した結果、日本語の漢語も和語も、中国語と同じ共起語を取るものは、日本語習熟度に関わらず正誤判断テストの結果が高いことが明らかになった。一方、中国語と同じ共起語を取らない場合は、漢語でも和語でも日本語習熟度に比例して、正誤判断テストの得点が高くなる傾向が認められた。つまり、中国人日本語学習者の場合、中国語と同じ漢字を用いた語については、漢語だけでなく和語でも中国語の知識を転用しやすいことが示唆された。量的データで得られたこの知見を検証するため、2011年3月に短文の誤文訂正調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査、データ分析が順調に進んでおり、平成24年8月の日本語教育学会国際大会(名古屋)研究発表(査読有)に採択され、成果を発表する予定である。また、5月に行うモンゴルでの調査結果を分析することにより、漢語連語習得における母語の知識の転移の有無についても検討が可能になると思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査の結果、漢語動詞にも和語動詞にも負の転移が見られた。この結果が、日本語学習者に共通するものか、中国人母語話者だけに見られる現象なのかを明らかにするため、今年度は非漢字圏の学習者を対象に、モンゴル国立科学技術大学にて、Ulambayar Tsetsegdulam教授の協力の下、調査を実施する予定である。 また、漢語動詞、和語動詞とその共起語を用いて作成した視覚による短文の正誤判断の結果が、聴覚においても同様の傾向がみられるかどうかについて、中国語母語話者を対象に更なる調査を行いたい。
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